コンプライアンスの枠を超えた発想:LEI取得のビジネスケース
取引相手について、より賢明で、経済的で、信頼性の高い判断を行う方法
これまで、取引主体識別子(LEI)の導入に関する議論は、主として規制報告および監督における取引主体の識別に関連した取り組みに集中していました。これは、金融危機後のLEI標準の導入により、当局がシステミックリスクや台頭するリスクを評価し、トレンドを特定して是正措置を講じる能力の強化を当面の目標としたことが背景にあります。
現在のLEIの数が示すように、こうした取り組みは素晴らしい成果を上げました。2017年6月末現在、デリバティブ市場を中心に、約52万件のLEIが活動中の取引主体に割り当てられました。こうした取引主体の大半は米国と欧州連合(EU)を本拠地としており、これらの地域では、規制報告において取引の相手方を個々に識別するためにLEIを使用するよう規制により求められています。これらの規制には、金融規制改革法(ドッド・フランク法)、欧州市場インフラ規制、改定を予定しているEU市場の第2次金融商品市場指令(MiFID II)と金融商品市場規則(MiFIR)などがあります。(規制によるLEIの使用に関する詳しい情報は、下記の「関連リンク」をご参照ください。)
これまでこうして成功してきましたが、グローバルLEIシステムは、より広いビジネスコミュニティにも恩恵をもたらす可能性があると、私たちは確信しています。世界中の組織は、規制当局とうまく付き合う必要があるばかりか、取引相手に関して、より賢明で、経済的で信頼性の高い判断を行えるようにする必要があります。
GLEIFビデオ:企業の点をつなぐ
LEIを取得してビジネスにお役立てください。民間部門における好機
世界中の企業は現在、金融市場参加者を識別してデータをつなぐ要となる、共通の取引主体識別システムを開発し実施する方法に取り組んでいます。企業IDの取得は、時間と費用がかかる複雑な仕事になることがあります。まだ殆どの組織が、既存または見込みの顧客、提携先や取引先に関する最新の参照データを照合することのできる単一データベースを維持していません。関連データを収集して維持するには、市場全体にわたりリソースを結びつける努力の反復が求められ、その努力をそれ以外に向けられればもっと生産的になる可能性があります。
しかしながら、単にデータを大量に収集するだけでは十分とはいえません。2016年7月のFinancial Times紙の記事が述べていたように、必要なことは、「様々な国の管轄区域にまたがって企業間に存在する関連を追跡する」方法なのです。これまで、特にクロスボーダーの企業構造に関して、関連情報の追跡は極めて困難になっています。つまるところ、世界の証券取引所に上場する企業は数千社、国内登録するその他の企業は数百万社存在します。後者のグループは、登録が個々にバラバラに存在し分断されているため、さらに多くの問題を抱えています。
厄介なのは、これまで取引主体の参照データが私有され別々に保管されていて、標準化されていないことなのです。
それでは、どのような解決策があるのでしょうか?良いニュースとしては、解決策が存在し、解明に向けて既に進展がみられることがあります。それは、グローバルLEIインデックスの形で存在しています(下記の「関連リンク」を参照)。これは、Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF)の提供するサービスの結果生まれた、グローバルに金融取引に携わる全ての取引主体を把握できる、オープンで標準化された高品質の取引主体参照データを提供する、無料のオンラインソースです。グローバルLEIインデックスは、取引主体識別に効率性、透明性、信用をもたらします。
取引主体の正式名称や登録所在地など、今までにLEI参照データとともに入手可能になっている名刺情報が、「誰が誰か」という質問に対する答えを提供します。今後は、LEIデータプールが、「誰が誰の親会社なのか」という質問に答える情報を含めるように、次第に拡張されます。このデータは、個々の企業が所有する事業体を調べることができるように、直接の親会社と最終親会社を特定すること、またその逆も可能にします。誰が誰を所有しているかを明確にするデータを発行することにより、GLEIFは、オープンで標準化された高品質のLEIデータに基づき、企業の点をグローバルにつなぐことを可能にする、唯一で無料のデータソースを提供します。
グローバルLEIインデックスを活用すれば、組織全体でコストの削減、業務の簡素化と加速、グローバル市場に対するより深い見識が得られます。顧客やその他の提携先など取引の相手方を全て、LEIを用いて一意的に、容易に、かつスピーディに識別できれば、それがコスト面のメリットと新たなビジネスチャンスをもたらすことになるでしょう。LEIデータプールにアクセスして使用することにより、例えば、リスク管理、コンプライアンス、顧客関係管理など、数多くの用途が生まれる可能性があります。
グローバルLEIインデックスによって生み出される、より広いビジネスコミュニティが受ける恩恵は、LEIの採用率とともに大きくなります。そこで、当社から世界各国の企業に対して次のメッセージをお届けします。LEIを取得してビジネスにお役立てください。
透明性という課題に対する完全な解決策を今すぐに示すことはできませんが、LEIの利用がさらに普及していることから、私たちは確実にそれに近づいています。その進展を速めるためには、その世界中で共有されたオープンデータの原則、基準と優れた慣行のさらなる採用、実施を推進すべく統一と協力を促さなければなりません。
GLEIFは、LEIがカバーする様々な情報の恩恵を市場参加者が受けられるようにするため、グローバルLEIシステム内のパートナーと協力し、LEIデータの品質、信頼性、使いやすさの一層の最適化に引き続き注力して参ります。
LEIは、デジタル時代に取引主体識別の世界に広がる点をつなぎ合わせる要です。GLEIFは、世界中の民間および公的セクターの組織に対して、LEIを保有する恩恵を検討するように、そしてその提供物を十分に活用するように呼び掛けています。
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著者について:
シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。
ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。
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顧客関係管理, データ管理, データ品質, グローバルLEIインデックス, Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF), LEI ニュース, オープンデータ, LEIのビジネスケース