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透明性の力:LEI更新の割合に関する詳細な調査

GLEIFでは、LEI参照データの再検証に関する現況を更新し、すべての登録主体による定期的な更新を促す方法を検討します


著者: シュテファン・ヴォルフ

  • 日付: 2017-03-02
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Global Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)では、定期的に取引主体識別子(LEI)の重要性を解説しています。更新とは、LEI発行者が参照データ、すなわちLEIで識別できる取引主体の公開情報を毎年管轄のサードパーティのソースと比較して再認証することを意味しています。LEI発行組織(あるいは「付番機関」またはLOU)が、登録、更新、その他のサービスを提供し、LEIを取得しようとする取引主体の主要なインターフェースの役割を果たします。

LEIの取り組みの重要な促進力であり、GLEIFの設立機関でもある金融安定理事会(FSB)は、LEIの導入は「財務データの全体的な品質と正確性の向上に役立つ」ことを強調しています。データプールによってこうした目標を達成できるかどうかは、信頼性のあるオープンデータを利用できるかどうかにかかっています。取引主体が、LEI参照データと併記される「次の更新日」までにLEI登録を更新または再認証できなかった場合、LEIの登録ステータスは「発行済み」から「期限切れ」に変更されます。  2017年3月時点で、LEI全体の30%が期限切れとなっています。この数値は、2015年の開始以来観察されてきた期限切れの割合をそのまま反映しています。

このブログ記事では、LEIデータのユーザーへの影響と登録されたすべての取引主体によるLEI参照データの定期更新を奨励するために考え得る方法を検討しています。すべての管轄にわたって期限切れLEIの詳細な調査も行っています。

このブログの引用元は、「関連リンク」にまとめてあります。

期限切れLEI:データユーザーへの影響

GLEIFは、LEIデータの品質、信頼性、使いやすさをさらに最適化することに焦点を置いたデータ品質管理プログラムを実施しています。また、データ品質は毎年のLEI更新プロセスによっても保証されます。取引主体参照データに変更がある場合、取引主体は管轄のLEI発行組織に通知する必要があります。また、毎年の更新プロセスにより、取引主体とLEI発行組織は少なくとも1年に1回は取引主体参照データを見直し、再検証を行う必要があります。

このため、期限切れLEIの割合を最小限に押さえれば、LEI全体で利用できる豊富な情報から得られる利益を最大化できます。

今までのLEIデータの主要なユーザーは公共部門です。金融危機後、LEIイニシアチブのドライバー - G20、FSB、および世界中の多くの規制機関– の目的は、デリバティブ市場に透明性をもたらすためにLEIを使用することでした。今日まで、LEIは主に規制を目的とする報告で取引相手を一意的に識別するために、規制によってLEIの使用が求められている米国およびヨーロッパに拠点を置く取引主体に割り当てられてきました。これらの管轄区域にある公的機関は、リスクを評価し、是正処置をとり、必要に応じて市場における不正行為を最小化するために、LEIに依拠しています。

LEIが幅広く採用されれば、民間部門にも大きな利点が生まれます。世界中の企業が、金融市場参加者を識別してデータをつなぐ要となる、共通の取引主体識別システムをどのように開発し実施するかということに、取り組んでいます。あるいは、「グローバルLEIインデックス」が、高品質な取引主体参照データを提供する、オープンかつ標準化された重要なソースとして確立されれば、運用は単純化され、加速できるようになります。グローバルLEIインデックスは、1つのリポジトリー内の関連参照データを含む、過去および現在のすべてのLEI記録のゴールデンコピーによって構成されています。興味を持つ当事者は誰でも簡単に、GLEIFが開発したウェブベースの検索ツールを使って、完全なLEIデータプールにアクセスし検索することができます。

グローバルLEIインデックスの利点を活かすことにより、グローバル市場に対する、より深い見識が得られるようにもなります。商取引先ー法人顧客および中小企業やプロバイダなどの提携先ーをすべて、一意的に、容易に、スピーディにLEIで識別できるようになり、それによって得られる費用便益と新しいビジネスチャンスは格段に大きくなります。これらの理由から、民間部門のLEIデータユーザーには、LEIを良好な状態に保つことを取引先に要求する強いインセンティブがあります。これは、データユーザーが確実に適切な取引主体と取引をするための唯一の手段であると言えます。

したがって、LEIデータが正しく、今まで最新の状態であることに依拠できるようになるのは、公共部門や民間部門のユーザーの観点では必要不可欠なこと、あるいは当然そうなるはずのことなのです。

更新する理由

このことが正しいとした場合、更新は、すべてのLEI登録者によって定期的に更新が行われることを要求するLEIデータユーザーの大きな関心事になります。

2015年11月、LEI規制監視委員会(LEI ROC)は進捗報告書「グローバルLEIシステムと、規制措置におけるLEIの使用」を発行しました。LEI ROCは、報告書の添付資料2に、LEIに関する規則の用語として用いられる定義を記載しています。LEI ROCが提案した、規則や規制の記述で使用するLEIの定義によれば、とりわけ、LEIは「グローバルLEIシステムの規則により最新とみなされる」ことになります。LEI ROCは、共同で世界金融市場の透明性に関する取組を前進させることで一致した、世界中の公的機関を代表しています。LEI ROCは、GLEIFの監督役として、GLEIFがグローバルLEIシステムの原則に従っていることも確認します。

こうしたシナリオでは、LEIの使用を義務付けている各国の公的機関は、規則に関する最新の要求事項がすでにあるときにLEI ROCの要求事項に適合できるように、既存の規制に準拠しながら新しい規制の草案を作成することを検討していることがあります。

また、関連法規があれば、有効な実施メカニズムを確立し、要求事項に準拠していない場合に適用可能な制裁体制を定義して、LEIが正しく更新されることを維持することができます。

民間部門のLEIの申請では、企業は、LEIを良好に保っている取引先とのみ取引することを指定できます。

その結果、更新には、適用法に準拠していないことで制裁を受けるというリスク、またはLEIのステータスが期限切れのままである取引主体とは取引先が取引を行わない可能性があるためにビジネスに悪影響が出るリスクを理由に、スケジュールが遅れている取引主体が出てきています。更新のときにこうした不確実性を回避するためには、手数料を少しだけ払う必要があるかもしれません。

欧州証券市場監督局の確認事項:MiFIRの適合では、LEIを正しく更新する必要がある

欧州連合(EU)における取引主体の取引では、新しい規制の要求事項を翌年に適用しなければならないことも覚えておいた方が良いです。EUの改訂版第2次金融商品市場指令(MiFID II)および金融商品市場規則(MiFIR)は2018年1月3日に発効します。MiFID II/MiFIRによる法律の施行により、これまでそのような義務を一切負っていない多くの関係者がLEIの取得を求められるようになります。MiFIRに基づく取引報告では、欧州証券市場監督局(ESMA)は、サービスを提供する前に投資会社は顧客からLEIを取得する必要があると明言しています。サービスの運営により、顧客のために行われた取引に関する報告義務が発生します。ESMAは、MiFIRに適合するには、投資会社は自社LEIの正しく更新し、維持する必要があることをGLEIFにも確認しています。 

要約:LEIを年次更新する取引主体の義務

識別は、他のオブジェクトと区別されるオブジェクトに関連付けられた属性の値を組み合わせたもので作成されます。LEIの場合、オブジェクトは取引主体であり、属性は取引主体の参照データです。識別管理では、ある時点でこれらの属性値に関する知識が必要になります。これらの値は、たとえば、M&A取引、企業名の変更や本社の再配置の結果として、識別管理を通じて時が経つにつれて変化することがあるので、少なくとも識別に対する定期的なチェック、すなわち属性値の再確認を行う必要があります。

LEIのすべてのユーザーが十分に管理されるようになると、基礎となるデータを信用できるようになるので、このデータを他のソースと比較して再検証する必要はありません。これは、LEIシステムの導入により識別管理にもたらされる価値であり、どんな金融取引でも取引主体を一意に識別できる、信頼性のあるサービスとオープンで信頼できるデータであると言えます。

自己登録プロセス中、LEIを取得しようとしている取引主体は、LEI発行者に正確な参照データを提供する必要があります。次に、LEI発行組織は、現地当局(国の商業登記所など)によるデータの確認を経て、LEI基準に適合するLEIを発行する必要があります。

欧州中央銀行のLEIデータ記録の抜粋:

LEI記録に記載される特定の更新日と、LEI参照データの再認証のために取引主体からLEI発行者に支払われる手数料は、取引主体とLEI発行者の間で合意されたものです。 

LEIを取得して、定期的にLEIを更新する取引主体の義務は、LEIを他の識別子と区別する上での鍵となる特徴です。その理由は以下のとおりです。

  • 第一に、更新の仕組みは、LEIで識別できる取引主体の情報が正確であり、これまで最新の状態であることを確実にするために必要不可欠です。定期的にデータを検証するという厳格な体制を実現している、グローバルかつオープンな取引主体識別システムは他にありません。
  • 第二に、データのユーザーは、特定のLEIに関する情報が最近再検証されたのかどうかを認識しています。グローバルLEIシステムには、データが最後に検証された時間枠で絶対的な透明性の高さを提供する独自性があります。

すべての管轄にわたる期限切れLEI全体の詳細な調査

一般的な注釈として、登録ステータスが「期限切れ」のLEIでも適切なLEIであることを強調しておく必要があります。「期限切れ」というステータスは、単に再認証、つまりサードパーティのソースと比較した情報の再認証が、予定よりも遅れていることを表しています。2015年の開始以来、期限切れLEIの割合は30%のままです。

しかし、期限切れLEIを構成する個々のLEIはどの時点でも大きく異なるという点には留意する必要があります。2017年のはじめに、GLEIFは、1,000以上のLEIを有するすべての管轄全体で期限切れLEIを分析しました。この分析では、(2015年と2016年の期限切れLEIの割合をそれぞれ国ごとに比較するために使用した)以下の指標について明確なパターンを特定しています。

  • 「発行済み」に対する「更新済み」の比率:これは、2015年末の時点でのステータスは良好で、LEIにひも付けられた参照データの定期的な再検証に対してグローバルLEIシステムで適用されるポリシーに準拠して2016年に更新されたLEIの比率です。
  • 「期限切れ」に対する「更新済み」の比率:これは、2015年末の時点ですでに期限切れになったものの2016年に更新されたLEIの比率です。このケースでは、取引主体は、前回コミットされた更新日の後にLEIを更新しています。
  • 「発行済み」に対する「期限切れ」の比率:これは、2015年のステータスは良好だったものの2016年に期限切れになったLEIの比率です。このケースでは、LEI登録者は、1年以内のLEIの更新に失敗しました。
  • 「期限切れ」に対する「期限切れ」の比率:これは、2015年にすでに期限切れとなり、2016年にも更新を失敗したLEIの比率です。このLEIは、期限を過ぎても該当ポリシーに違反し続けることを決定したと考えられる取引主体を表しています。

1,000以上のLEIを有するすべての管轄の期限切れLEIに対するGLEIFの分析は、次のような結果を示しています。この分析は、2015年と2016年の5カ国の国ごとのデータの比較に基いており、上記のように比率の上位国を掲載しています。

1,000を超えるLEIを有する管轄は比率が最も高く(プラスの実績)なっています *

1,000を超えるLEIを有する管轄は比率が最も高く(マイナスの実績)なっています *

このスナップショットは、どのLEI発行者がLEIを管理するかに関係なく、1カ国内のみならずLEI全体で固有のLEIを有する個々の取引主体の行動を特徴づける動的特性は多様であることを示しています。1カ国内で対照的な傾向が観測されることがあるということも示しています。たとえば、日本では、2015年に発行され、2016年に正しく更新されたLEIの比率が2番目に高く、同様に、2015年に期限切れとなり、2016年にも期限切れのままの状態のLEIの比率が2番目に高くなっています。

期限切れLEIに対するLEI発行組織およびGLEIFの役割

更新に関して、LEI発行組織の役割は、更新サービスを利用できるようにし、該当ポリシーに適合する義務があることをLEI登録者に認識させることに焦点を置いています。しかし、LEI発行者がサードパーティーのソースと比較して検証しなければならない情報の提供を取引主体が拒んだ場合、LEI発行者は更新を実行できなくなります。今までのグローバルLEIシステムで適用可能なポリシーでは、決められた期間に更新プロセスに取り組まなかった場合にLEI発行者が取引主体に何らかのペナルティを科す方法を予見できませんでした。LEIを再検証することなく更新日が過ぎてしまった場合、LEI発行者が取ることができる唯一のアクションは、登録ステータスを「発行済み」から「期限切れ」に変更することです。

同様の理由で、GLEIFが、ポートフォーリオ内の期限切れLEIの割合に基いてLEI発行組織に制裁を与えるポジションにいないことも強調しなければなりません。GLEIFは、各LEI発行者が基本契約に定められたサービスを確実に実現することに責任があります。基本契約は、GLEIFとLEI発行組織の関係に適用される、契約上のフレームワークです。期限切れのLEIが、LEI発行者の更新サービスが十分でなかった結果であることを示すものは今のところありません。対照的に:1,000以上のLEIを有するすべての管轄での、2015年と2016年のデータ比較に基づいた期限切れLEIに関するGLEIのF分析で示されているとおり、LEI発行組織はすべての取引主体1つ1つにデューデリジェンスを行っています。現在、期限に関係なくLEIを更新しないと決めた登録済みの取引主体が約30%いるという事実は、個々のLEI発行者の管理の対象外です。

LEI発行組織とGEILFができるのは、LEIを取得して契約上の義務に適合する取引主体に呼びかけて、LEIを良好な状態に保つことの名声上の価値を認識してもらうことだけです。これは、信頼を育む上で重要なことです。LEIを取得して良好な状態に保つことの事例がビジネスにもある、というのが本稿の見解です。したがって、本稿でのメッセージは以下のようになります。LEIを取得してビジネスに役立てること。

大事なことを言い忘れていたので、透明性について付け加えておきます。期限切れLEIの割合は、グローバルLEIシステムを支える資金調達モデルにも影響を与えるという事実を強調しておきます。グローバルLEIシステムは、LEI発行者間の競争を促進し、LEIを取得しようとする取引主体の利益を奨励するよう設計されています。LEIの発行および維持のためにかかる手数料がLEI発行組織にとって特に問題となっており、費用に基づいて実施する必要があります。GLEIFは非営利財団であり、すべてのサービスはユーザーが無料で使用できるようになっています。GLEIFは現在、LEIの発行者から、LEIの発行/更新につき19米国ドルを受け取っています。

将来的な成長と期限切れLEIの割合を減らすことにより、こうした手数料をさらに下げることができます。

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著者について:

シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。

ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。


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データ品質, LEIの更新, 期限切れのLEI, LEI発行者(付番機関 – LOU), Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF), データ管理, 標準, コンプライアンス, MiFID II / MiFIR, 規制監視委員会(ROC)