グローバルLEIシステム:これまでとこれから
LEI規制監視委員会会長が、システムの成長や利便性をさらに促進するために進行中のアクションや、その成果について解説します。
グローバルLEIシステムは3つのレベルで運営されています。
2015年も間近に迫った今、グローバルLEIシステムの歩みや、現状、これからについて振り返ってみたいと思います。
LEIのストーリーはよいストーリーです。「2012年、世界各国の当局は、何十年もの間、業界や規制当局の悩みの種となっていた「集団行動」の問題、つまり金融市場の参加者を識別し、データを結びつけるための要となる共通の取引主体識別システムをどのように開発、導入するかという問題を、私たちが解決する必要があるという決定を行いました。私たちは、システムが次の3つの質問に答える必要があることに気付きました。誰が誰なのか。誰が誰の親会社なのか。誰が何を保有しているのか。」
また私たちは、システムには普遍性、持続性、アクセスしやすさという3つの基本的な機能が必要だと結論づけました。データの作成者や保存場所に関わらずデータを組み合わせ、相互運用できるようにするためには、普遍性が必要です。企業の合併、買収、段階的縮小後も毎年データの信頼性を維持するためには、持続性が重要です。また、企業、当局、一般市民がグローバルな金融市場の取引主体に関する重要な情報を入手できるように、アクセスしやすさも求められます。
これら機能の実現には、システムのガバナンスと、民間部門の積極的な参加が欠かせません。私たちは、G20や金融安定理事会(FSB)と協力し、その後LEI規制監視委員会(ROC)がシステムを監督することで、普遍性を達成しています。この記事の執筆時点で、G20の参加国よりもはるかに多い50カ国から80以上の当局が、システムが公共の利益となるよう協力を行っています。民間部門は、(新しいLEIコードの使用義務付けにより)持続性、(課金制を避けるための資金調達メカニズムにより)アクセスしやすさの達成を「後押し」しています。これを受け、LEI ROCに参加する当局は、報告や取引でのLEIの使用を定める30以上の規則を制定してきました。
LEIは、民間と公共の両部門の利益となるよう設計されています。
この取組みの当初から、公共部門だけでは上記の特徴を達成できないことは明らかだったため、私たちは民間部門の参加を求めました。まず、私たちは標準化団体の国際標準化機構(ISO)と協力し、現在のLEI標準であるISO 17442を開発しました。この標準は、LEIが民間と公共の両部門の利益のために設計されており、世界中で利用可能であることを示しています。加えて私たちは、民間部門のメンバーに、民間部門準備グループを通じた考察への参加を促しました。
その後私たちは、LEIを割り当てるために市場参加者と直接やりとりを行う複数の(現在は数十件の)公益事業の立ち上げに寄与しました。付番機関と呼ばれるこれらの公益事業は、ライフサイクルを通じてLEIを管理し、それにより重複を防ぎ、ダウンロード可能な無料のグローバルデータベースを通じて世界的にデータを提供することにより、GLEIFの持続性とアクセスしやすさを支援しています。
加えて、私たちはシステムの要となるGlobal LEI Foundation(GLEIF)を設立し、その監督を行っています。GLEIFは、設立規定で定められた公共の利益を守るよう付番機関の連携と監督を行い、LEI ROCによる取引主体の識別に関する新しい標準の開発、実施を支援します。
次のステップ:企業の親会社に関する情報の収集
現在、LEI ROCの会長としての私の3年間の任期が終了に差し掛かっています。また、LEI ROC副会長であるフランス銀行のベルトラン・クイヨー氏と、日本金融庁の水口純氏も同様です。
GLEIFの設立から18ヶ月で、私たちは多くの成果を挙げてきました。GLEIFは、公共の利益に関する原則を責任をもって守ります。GLEIFは規模の拡大とともに、データ品質にますます注力しています。付番機関との関係性を規定する基本契約書には、システムによって作成されるデータを確実に一般に公開し、システムがグローバル金融システムの隅々まで拡大、浸透できるような柔軟性を確保するための重要なツールが含まれています。また、GLEIFはすべてダウンロードや検索可能な、信頼性の高いデータベースを立ち上げました。このデータベースでは、27の付番機関による40万以上の企業の記録をシームレスに組み合わせています。現在、標準を組み込む機能を開発中です。
GLEIFがシステムを管理できる定常運転に入った今、LEI ROCは次の2つの重要なタスクに注力していく予定です。(1) システムが引き続き公共にとって重要な役目を果たすよう監督する。(2) GLEIFによって実施されるポリシー要件を規定する。付番機関やLEI登録者が、個人事業主または支店にかかわらず、どの取引主体がLEIを取得可能なのか理解できるように、一部のポリシーではLEI標準の改善、明確化が必要です。
現在LEI ROCが検討中の最も重要なポリシー標準は、前述の「誰が誰の親会社か」という質問に答えることができるでしょう。2015年10月、LEI ROCは、初めにどうやって企業の親会社に関する情報を収集するかについて述べた協議報告書を発行しました。現在、一般からいただいたコメントを検討している段階です。来年はさらなるニュースの発表を予定しています。
広範囲のカバーが引き続き優先事項に
LEI ROC、GLEIF、システムのその他パートナーのもう一つの優先事項は、LEIで広い範囲をカバーすることです。現在までに180以上の国で40万件以上のLEIが企業に対して発行されました。標準の制定からわずか数年で、この採用率を達成できたのは素晴らしいことです。私たちは、規制面でのLEIの採用や、企業による自発的な採用により、さらに多くを達成できると考えており、またそれを目指しています。結局のところLEIは、対象となる業界が、その利益のために定めた標準であり、私たちはこの目標を達成可能だと考えています。
次の数年間で、LEIシステムのカバー範囲や利用価値が大きく高まることをご期待ください。
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著者について:
マシュー・リードは、米国金融調査局の主任顧問を務めています。彼は同局で金融安定性の監視と分析を行うオフィスのシニアマネージメントチームに所属しており、オフィス内のすべての法的活動を監督しています。2012年1月に、グローバルLEI財団や、より広範なシステムを監督するために世界中の80以上の機関から構成される、グローバルLEIシステムの規制監視委員会の初代会長に選ばれました。リード氏は以前、米国証券取引委員会の上級職や、上院および司法省の弁護士として、公共サービスに関する業務を経験しています。リード氏はジョージ・メイソン大学の法学部を優秀な成績で卒業し、同大学のローレビューに携わりました。
この記事のタグ:
ポリシー要件 , 標準 , 規制監視委員会(ROC)