取引主体識別子ニュース:2016年1月更新
Global Legal Entity Identifier Foundationは、取引主体識別子の導入に関する世界的な最新動向をまとめてお伝えします。
2015年12月、RegTechは「2015年は取引主体識別子(LEI)プロジェクトの躍進の年となりました。」とコメントしています。現在までに40万件以上のLEIが発行されました。Global Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)は、2016年も引き続きLEIが広く採用されることを確信しています。
ステークホルダーの皆様がLEIの公開に関する世界的な動向を簡単に把握できるように、GLEIFはGLEIFブログを通じて関連情報の更新を行っていきます。このブログ記事では、2015年11月以降のLEIニュースと市場での議論をまとめてお伝えします。
このブログで使用した引用元は、下記の「関連リンク」に記載されています。
金融安定理事会が、コルレス銀行の利用縮小に対して行った評価や対応に関するG20への報告書を発行
2015年11月6日、金融安定理事会(FSB)は、コルレス銀行の利用縮小に対して行った評価や対応に関するG20への報告書を発行しました。Mondovisione Worldwide Exchange Intelligenceの説明によると、「報告書は、銀行によるコルレス銀行の利用縮小の規模と理由や、金融排除のリスクなど各管轄に与える影響について、他組織と協力して調査を行うFSBの活動に関する最新情報を提供します。」
「大銀行が挙げたコルレス銀行の利用縮小の主な理由は、取引先の銀行の管轄における資金洗浄やテロリストへの資金提供のリスクでした。当局や地方銀行が挙げた主な理由は、全体的なリスク選好度と低い収益性でした。資金洗浄のリスクや、さらなるデューディリジェンスによるコスト増もこれに影響を与えている可能性があります。」
FSBは、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、決済・市場インフラ委員会(CPMI)、金融活動作業部会(FATF)、国際通貨基金(IMF)、LEI規制監視委員会(LEI ROC)、世界銀行と協力し、4項目のアクションプランで引き続きこの課題に取り組みます。このアクションプランでは、課題の規模や影響のより詳しい調査、規制事項の明確化、回答を行った、影響を受ける銀行の管轄内における国内体制の構築、コルレス銀行のデューディリジェンスのためのツールの強化を目指します。
上記の最後の項目には、「顧客の本人確認(KYC)設備や、グローバルなLEIの広範な使用を通じた、コルレス銀行の共有情報が含まれます。」CPMIとLEI ROCは、上記の分野に関する提案を行いました。LEI ROCは、グローバルLEIシステムを監督するため、2013年1月に設立された世界50カ国以上、80以上の公的機関によるグループです。
2016年2月までに、関連する他のステークホルダーとともに、FSBはコルレス銀行を利用するすべての銀行に対するLEIの使用促進計画を作成する予定です。
決済・市場インフラ委員会と証券監督者国際機構が、固有商品識別子の整合化に関する協議報告書を発行
2015年12月17日、決済・市場インフラ委員会(CPMI)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、「固有商品識別子(UPI)の整合化」に関する協議報告書を発行し、パブリックコメントを募集しました。
関連するプレスリリースによると、報告書は「当局により取引情報蓄積機関(TR)への報告が義務付けられた店頭(OTC)デリバティブ商品を一意に識別するための、整合化されたグローバルなUPIに関する提案を行います。UPIは、製品の分類システムと関連コードから構成されます。この報告書は、製品の分類システムに焦点を当てています。」
「この報告書は、店頭デリバティブ市場の透明性を高め、システミック・リスクを軽減し、市場での不正行為を防ぐために改革を行うというG20のコミットメントの一部として、すべての店頭デリバティブ契約を取引情報蓄積機関に報告するという2009年のG20の合意に応えるものです。取引情報蓄積機関に報告されたデータを集約することにより、当局は店頭デリバティブ市場とその活動に関する包括的な情報を得ることができます。
CPMI、IOSCO、FSBは「近年、有意義な集約をグローバルに行うための、主な店頭デリバティブデータ要素の整合化の基礎となる報告書を発行してきました。」
UPIの整合化に関するCPMIとIOSCOの協議報告書によると、2014年9月、FSBは「グローバルな集約データの生成、共有機構の実現可能性に関する調査(集約実現可能性調査)」を発行しています。調査の結論の1つは次のとおりです。「どのような集約を行う場合も、特に取引主体識別子のグローバルな導入や、固有取引識別子(UTI)、固有商品識別子(UPI)の制定など、重要なデータ要素の標準化と整合化作業の完了が欠かせません。」
2014年の実現可能性調査の後、FSBはCPMIとIOSCOに対し、UTIやUPIなど、当局のデータ集約にとって重要な、取引情報蓄積機関に報告されるデータ要素の整合化に関するグローバルなガイダンスの作成を要請しました。
UPIの整合化に関する協議報告書は、上記の指令に対する整合化グループによる返答の一部です。報告書は、2016年2月24日まで、一般事項や特定事項に関する回答者からのコメントや提案を受け付けています。
UTIと主要店頭デリバティブのデータ要素(第1回)の整合化に関するCPMIとIOSCOの協議報告書に対する反応が公開
過去にCPMIとIOSCOは、「固有取引識別子の整合化」(2015年8月)および「主要店頭デリバティブのデータ要素(UTIとUPIを除く)の整合化 – 第1回」(2015年9月)に関する協議報告書を発行しました。両方の報告書に対するコメントは、国際決済銀行のウェブサイト(下記の「関連リンク」参照)で公開されています。
今後、UPIコードや、主な追加データ要素(UTIやUPI以外)に関する個別の協議報告書の発行が予定されています。
スイスが金融市場参加者のためのグローバルな識別システムに貢献
2015年12月4日、スイス連邦参事会、連邦財務省、連邦統計局は、以下の通りグローバルLEIシステムへの参加を表明しました。「金融市場の各参加者に対して同一のグローバルな取引主体識別子を使用することにより、金融データの品質向上や、システミック・リスクの評価促進につながります。スイスでは、金融市場インフラ法の発効後初めて、デリバティブ取引の報告にこの識別子が使用されます。また、連邦統計局が今後これらの識別子を発行するための基盤作りが行われる予定です。
現在までに、スイスからは2名の代表がLEI ROCのオブザーバーを務めています。2015年12月4日の決定により、「連邦参事会は連邦財務省(FDF)がLEI ROCの正式な会員となり、今後のLEI標準の開発に積極的に参加することを承認します。」また、スイス国立銀行(SNB)は、監視委員会への参加を目指しています。
FDFのLEI ROC参加と平行して、「連邦内務省は、スイス国内で連邦統計局が今後LEI番号を発行するための基盤作りを行います。」
全米先物協会のスワップディーラーやスワップ参加者の登録情報にLEIが追加
Lexologyによると、米先物協会(NFA)は2015年12月8日、「同協会がウェブサイトで提供するデータファイル、つまりスワップ取引に加わる市場参加者やその他取引主体が使用可能な、集約された情報の一覧を含むスワップディーラーや主要スワップ参加者の登録情報に、LEI情報を追加したことを発表しました。」LEI情報を含まない、元の登録情報の提供は2016年7月1日に終了します。
NFAは、「取引所取引の先物、取引所外取引の小売外国為替(forex)、店頭デリバティブ(スワップ)を含む米国デリバティブ業界の自主規制機関です。NFAは、30年以上にわたって規則を実施し、プログラムを提供し、さらに市場の健全性を守り、投資家を保護し、会員が規制責任を果たすためのサービスを提供してきました。」「米国先物取引や、小売外国為替市場で一般にビジネスを行う全員が職務上の高い行動規範を遵守するように、NFAへの入会は必須となっています。また、スワップディーラーや主要スワップ参加者にもNFAへの入会が義務付けられています。NFAの会員数は現在4,100社、57,000名にのぼります。」(NFAウェブサイト)
証券派生スワップ情報の提供方法に関する米証券取引委員会の規則案
連邦官報 – 米国政府による日誌によると、2015年12月23日、米証券取引委員会(SEC)は証券取引法の規則13n-4(b)(5)に基づく、証券派生スワップ情報蓄積機関(SDRs)のSECに対する証券派生スワップ(SBS)情報の提供形式と方法に関する改訂案を公開し、コメントを募集しました。SECは、国際的な業界標準である金融商品マークアップ言語(FpML)や、金融情報交換マークアップ言語(FIXML)を参照し、SECのウェブサイトで公開されるスキーマに基づく上記データの提供をSDRに義務付けることを提案しています。
適用されるいくつかの規則によると、「証券派生スワップの各取引先に加え、取引先と提携または取引に参加しているが、その取引の取引先ではない人々の身元報告が義務付けられています。」SECは、グローバルLEIシステムを、固有の識別コード(UIC)を個人に割り当てる国際的に認められた標準化システム(IRSS)と位置づけているため、上記の人々がLEIを取得し、登録済みSDRが彼らの識別にそのLEIを使用する必要があります。LEIの取得義務は、規則901(d)(1)、901(d)(2)、901(d)(9)、906(a)、and 906(b)で列挙された全員には適用されないため、スキーマではLEI以外の識別子も利用可能です。同様に、取引執行者やブローカーはLEIを保持していない場合があるため、スキーマでは取引執行者IDやブローカーIDにLEIやLEI以外の識別子を使用できます。また、903(a)の要件を満たすIRSSは支店ID、トレーダーID、トレーディングデスクIDの割り当て手法を採用または開発していないため、スキーマでは登録済みのSDRが開発した識別子や手法を使用することができます。」
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著者について:
シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。
ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。
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