ニュースルーム&メディア GLEIFブログ

取引主体識別子ニュース:2016年4月更新

Global Legal Entity Identifier Foundationは、取引主体識別子の導入に関する世界的な最新動向をまとめてお伝えします。


著者: シュテファン・ヴォルフ

  • 日付: 2016-04-29
  • 閲覧数:

政府の知識ネットワークであるGovLoopは、最近次のように述べました。取引主体識別子(LEI)は、「世界中の金融規制を変革します。金融規制当局がすべての報告要件にLEIを採用すれば、投資家、政府機関、金融企業の全てが恩恵を受けるでしょう。投資家は特定の企業のオープンデータ登録を、異なる規制当局に即時に照会することができます。政府機関はより安価に分析を行うことができます。また、企業は内部のデータ管理を外部の報告と合致させることができます。」

ステークホルダーの皆様がLEIの公開に関する世界的な動向を簡単に知ることができるように、GLEIFはGLEIFブログを通じて関連情報の提供を行っていきます。このブログ記事では、2016年2月以降のLEIニュースと市場での議論をまとめてお伝えします。

このブログで使用した引用元は、下記の「関連リンク」に記載されています。

欧州委員会が提案する第2次金融商品市場指令(MiFID II)の適用延期によって、各組織のLEIに対する準備が遅れるべきではありません。

2016年2月10日、欧州委員会は、第2次金融市場指令(MiFID II)で定められた規則の遵守に関し、各国の所轄官庁と市場参加者にもう1年猶予を与えることを提案しました。新しい期限は2018年1月3日です。EUの執行機関によると、「MiFID IIパッケージが正常に稼働するために、技術的に複雑なインフラの設定が必要なことが延期の理由です。」

証券市場、投資会社、仲介業者を対象とするMiFIDは、経済危機に対処するため、より競争力のある統合されたEU金融市場を目指して作成されました。この法的措置の改訂は、「市場の基本原理に関する複数の弱点を示す市場動向」に対応するものです。MiFID IIによると、欧州委員会は、現在の証券市場に対する欧州の規則を補足、改訂することにより、これらの弱点に対処する考えです。

HSBC証券サービスのクリス・ジョンソンは、DerivSourceの記事「MiFID取引報告:データの隙間にご注意ください」で、予定されているMiFID IIと金融商品市場規則(MiFIR)で取引報告データに欠落が生じないように、投資会社は早期対策が必要であることを解説しています。

LEIに関して、彼は次のように述べています。欧州証券市場監督局(ESMA)のガイダンスによると、「LEIは取引の前に必要となります。つまり、『LEIなしでは取引できない』ということです。MiFID IIやMiFIRでは、投資への各参加者がLEIを提供する必要があります。これには、実施を行う取引主体、提出を行う取引主体、購入者、販売者、購入者の送信会社、販売者の送信フォーム(原文ママ)などが含まれます。取引施設は発行者にLEIを義務付けることになります。また、注文を提出した取引主体、顧客、その他非実行仲介業者にも管理義務があります。つまり、投資会社や取引施設が、各取引報告書で複数の参加者のLEIを入手し、それを報告システムに保存し、必要な管理手順を用意する必要があります。」

クリス・ジョンソンはさらに次のように強調しました。「取引報告に利用するためには、各LEIが「有効」となっている必要があります。自動車税の更新と同じように、LEIも「有効」状態を維持するには所有者による毎年の更新が必要です。」

MiFIDの「LEIなしでは取引できない」という方針により、必要なデータがまだ存在しないことを考慮して、 企業がデータ要件にできる限り早く取り組む強いインセンティブが生まれます。すべての投資会社が今すぐ取れる論理的なステップは、自分たちが所有する資産、現在の取引相手、顧客に必要なデータフィールドについて、現在入手可能なデータを調べ、欠落がないか確認することです。規制関連の市場データの欠落を他者が是正することを期待するのは、危険が大きすぎます。企業が課題の規模を把握し、自分たちのニーズが優先付けされていることを確認し、データの欠落を修正するとともに、十分な時間をとって規則に準拠した取引報告書を提出するには、今すぐカバー範囲の確認を行い、供給者や取引先と話し合う必要があります。

カナダがデリバティブ取引の報告規則をさらに整合化

BLG Borden Ladner Gervaisによると、2016年2月16日、カナダ証券管理局は、アルバータ州、ニューブランズウィック州、ニューファンドランド・ラブラドール州、ノースウェスト準州、ノバスコシア、ヌナブト準州、プリンスエドワード島、サスカチュワン州、ユーコン州(合わせて「参加管轄」)の証券規制当局が今年発行した多国間協定96-101「取引情報蓄積機関とデリバティブデータの報告」と、関連する付帯ポリシー96-101CP(合わせて「TR規則」)の改訂案を公開しました。デリバティブ取引の報告に関する同様の規則が、マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州で発効しています(「既存の規則」)。清算機関と、デリバティブ取引を行うディーラーは2016年7月29日以降、報告を行う他の参加者は2016年11月1日以降、参加管轄でのデリバティブ取引の報告が必要となります。改訂案へのコメント受け付けは2016年4月17日に終了しました。

改訂案は「既存の規則の改訂案と実質的に整合化されています。ブリティッシュコロンビア州についても、まもなく同様のTR規則改訂が行われるでしょう。」改訂案では特に、報告対象となる取引の該当する各取引先が、グローバルLEIシステムが規定した基準に従ってLEIを取得する必要があります。「また、個人など、LEIを取得できない取引先との取引では、報告を行う取引先と、指定の取引情報蓄積機関が、同一の代替識別子を使用して、資格を持たない取引先を特定する必要があります。」

カナダ:2016年6月30日から、私募に関するより詳細な報告が開始

JDSupra Business Advisorによると、2016年6月30日より、カナダのどの管轄でも、発行者は情報要件が大幅に拡大された整合化済みの新しいフォーム45-106F1(新フォーム)を使用して、上記日程以降行われる目論見書免除販売について報告する必要があります。また、2016年6月30日より、投資ファンドによる免除販売の年次報告は、会計年度毎から暦年毎に変更されます。新フォームは、私募に関する報告制度の改革に向けたカナダ証券管理局の2年間にわたる努力の結果です。「発行者と引受会社のコンプライアンスに関する負担を軽減し、免除市場のより効果的な規制監督を促進し、政策決定のために分析を向上させることが新フォームの目的です。」ただし、新レポートでは情報開示要件が大幅に拡大します。新フォームでは特に、識別情報(該当する場合)として、グローバルLEIシステムが定めた標準に従って割り当てられた発行者のLEIが新たに必要となります。

米証券取引委員会が自主規制機関に対し一部の連結監査証跡の要件を免除

Wolters Kluwer Law & Businessの2016年3月2日の記事によると、米証券取引委員会(SEC)は、国内18ヶ所の登録済み証券取引所と金融取引業規制機構(FINRA)に対し、「連結監査証跡(CAT)の作成に関する一部報告義務の免除」を承認しました。2014年9月30日にSECに登録されたCATに関する国内市場計画によると、「国内の証券取引所または証券協会は、すべての注文と報告対象のイベントを記録し、中央リポジトリーに対して電子的に報告を行う必要があります。」自主規制機関(SRO)による免除申請は、「割り当て報告における特定のサブアカウントの割り当てに実行を関連付ける、オプション市場のマーケットメーカーの見積、顧客ID、CAT報告者ID、タイムスタンプの精度に関係しています。」 

「SROの提案した顧客情報アプローチでは、最初の受注時または発注時に顧客IDを中央リポジトリーに報告する代わりに、各ブローカー・ディーラーは各取引アカウントに、企業指定の固有識別子を割り当てる必要があります。顧客を識別するため、ブローカー・ディーラーは中央リポジトリーにアカウントの種類、発効日、顧客の氏名、住所、生年月日、納税者番号または社会保障番号、アカウントでの顧客の役割、LEI、ラージトレーダーID(該当する場合)などの情報を送信します。」

米国米商品先物取引委員会がトレードオプションの取引先に対し、一部の報告、記録義務を免除する最終規則を承認

2016年5月16日、米国でLexologyにより報告Lexologyによると、2016年3月16日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、「スワップディーラー」や「主要スワップ参加者」ではないトレードオプションの取引先(Non-SDs/MSPs)に対し、一部の報告、記録義務を免除する最終規則を承認しました。最終規則によると、トレードオプションに参加するNon-SD/MSP取引先は、次の義務を免除されます。(i) フォームTOでトレードオプションについて報告する、(ii) 想定合計元本10億USドルを超えるトレードオプションに参加後、CFTCに通知する、(iii) 記録を行う(すべてのSDまたはMSP取引先に対するLEIの取得、提供を除く)」最終規則は2016年3月21日に発効しました。

CFTCのコメントによると、このアクションは、「リスクヘッジのためにデリバティブ市場を利用する商業エンドユーザーの懸念事項に取り組むものです。私たちは、彼らが金融危機に加担しなかったことを忘れてはなりません。トレードオプションは商品オプションの一種で、主に農業やエネルギー、製造業で使用されています。」CFTCは、トレードオプションがドッド=フランク法の焦点であるスワップとは異なることを認識する規則改訂案をまとめました。これらの変更により、このような営利事業の負担が軽減され、より商業リスクに対処できるようになります。」

金融安定理事会の中東、北アフリカ地域諮問グループが規制改革について協議

Mondo Visioneによると、2016年4月25日、「サウジアラビア通貨庁は、サウジアラビアのリヤドで、金融安定理事会(FSB)の中東、北アフリカ地域諮問グループ(RCG MENA)の9回目の会合を主催しました。FSB RCG MENAのメンバーは会合の初めに、まず2016年のFSBの優先課題と作業計画を見直しました。FSBの現在の優先課題は、合意した改革の徹底した実施を推進することと、特に、より弾力性のある金融機関を設立し、大きすぎてつぶせない銀行を終了させ(原文ママ)、デリバティブ市場を安全にするために、金融危機後の残りの改革の設計を完成させることです。また、FSBは、市場型金融の問題や取引主体の不正行為、金融技術の革新、気候関連の金融リスクなど、金融関連の新しい脆弱性やリスクを監視し、対処を行っています。」

「メンバーたちは、金融の安定には、金融包摂と効果的な消費者保護の両方が役立つ可能性があり、またその過程で金融教育が重要な役割を担うことを結論づけました。また、メンバーたちは、サウジアラビアやレバノンでの経験を共有することができました。」会合の終わりには、「LEIシステムの構造およびガバナンスや、各国当局や市場参加者が金融危機を発見、管理する上でLEIシステムが果たす役割について議論が行われました。」

ブログにコメントされる場合は、識別用にご自分の氏名をご入力ください。コメントの隣にお名前が表示されます。電子メールアドレスは公開されません。掲示板へアクセスまたは参加されることにより、GLEIFブログポリシーに同意されたものと見なされますので、当ポリシーをよくお読みください。



過去のGLEIFブログ記事をすべて見る >
著者について:

シュテファン・ヴォルフはGlobal Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF)のCEOです。2023年、彼はドイツ国際商工会議所(ICC)の理事に就任しました。2021年には、グローバルICCデジタル標準イニシアティブ(DSI)の下部委員会として新設された産業諮問委員(IAB)に任命されました。この任のもと、信頼できる技術環境に関するワークストリームの共同議長を務めています。ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフ氏は、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。


この記事のタグ:
店頭(OTC)デリバティブ, ポリシー要件, 標準, 規制, コンプライアンス, LEI ニュース, MiFID II / MiFIR