Global Legal Entity Identifier Foundationは、取引主体識別子の採用に関する最新の世界的動向の概要を提供します
著者: シュテファン・ヴォルフ
日付: 2017-05-19
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2017年2月、 Data Management Review がそのブログ記事「Driving Business Value Out of the Legal Entity Identifier」の中で強調し、関連ウェビナーにおいても明確に述べていた見解は以下の通りです。「取引主体識別子(LEI)は、固有かつ明白で永続的な取引主体識別子として有用ですが、証券などの他のデータセットと統合すると、オペレーションとビジネス両方にメリットをもたらすことができます。参加者に対する調査で、LEIと他のデータセットとの統合により組織にとってどのようなメリットを期待するかを質問してみたところ、「オペレーションとビジネスで大きなメリットを期待していることが明らかになりました。」
Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF) は、LEIの採用拡大によってビジネス界全体でコスト削減、業務の簡素化およびスピードアップが実現し、グローバル市場に関してより深い見識が得られるという点について、全面的に同意します。オープンかつ標準化された高品質のLEIデータが入手可能になることで生じる潜在的なメリットは、LEI の採用率の上昇に伴い大きくなる可能性があります。そこで、世界各国の企業に対して、当社から次のメッセージを贈ります。LEIを取得してビジネスに役立ててください。
「The Next Frontier in Data Management Responses to Regulation (March 2017)」と題したブログの記事の中で、Data Management Review は、欧州中央銀行(ECB)の統計局シニアアドバイザーのFrancis Gross氏の言葉を引用しました。同氏は、「規制当局は、従来よりも大型のデータシステムを構築しており、ほぼリアルタイムで粒度の細かいデータを配信しています。この理由は、データ集計がリスクを顕在化させられるほど十分に速くできないという、2008年の金融危機から学んだ教訓がもとになっています」と述べました。Gross氏は以下のように付け加えました。「規制当局は、企業のデジタル表現の標準化などのフィールドでより積極的に主導していく姿を見せる必要があります。また、契約書を進歩させなければなりません。報告要件が増えるのに伴い業界の負担を減らす唯一の方法は、低コストで迅速により多くのデータの配信を自動化できるインフラを提案することです。」LEIは次のように締めくくっています。「標準の取引主体識別子の提供において、こうした動きを支援しています。契約書についても同様に実施し、その後、法令を行使し、規制遵守のコストを最低限に減らす必要があります」
ECBのBenoît Cœuré専務理事は、『粒度の細かいデータの国際標準規格の設定: 取組の共有』(Setting Global Standards for Granular Data:Sharing the Challenge)(2017年3月28日)の第3回ワークショップにおいて、「デリバティブ取引で最大シェアを有する管轄区域は、既に報告可能なデリバティブ取引のあらゆるカウンターパーティに対してLEIの取得を義務付けています」と発言しました。また、「例えば、『誰が誰の親会社なのか』の関係性データを含めるなど、LEIのデータの豊富さが向上」してはいますが、「おそらく、管轄区域にLEIのさらなる普及を支援していくことがより一層重要になっています」と指摘しました。これに関して欧州連合(EU)は、「これまで発行されたLEI全体の約60%を占めており、LEIを参照しその利用を規定する規制が複数存在するなど、良い手本を示しています。その他の管轄区域も、新しい規制によって採用を義務化するなどして、LEIの利用を拡大させる必要があります。」
金融規制報告の高い品質と低コスト化の促進 (Promoting Higher Quality and Lower Cost in Financial Regulatory Reporting)(2017年1月):「データは金融の血液であり、金融データの量は膨大に膨れ上がっています。OFRの職員が作成した2016年度報告書によると、世界全体の1日の支払決済額は15兆ドルに迫っています。企業は、取引確認やリスク管理を行う際にデータに依存しています。規制当局は、企業と市場を監督するためにデータを必要としてます。両方とも高品質のデータが不可欠です。ただ、データ収集は必ずしも円滑に、効率良く進むとは限りません。米国の規制当局のシステムは細分化されており、そのため、企業は異なる方法で様々な規制当局に同じ情報を報告しなければならない場合もあります。こうした非効率の報告はコストが高く、品質の劣化につながります。(…) OFR は、複数の標準化の取り組みに関与しています。(…) 識別子の標準、つまりLEIに収斂しつつあるなか、規制当局はその他の識別子を義務付けています。(…) こうした余剰な追加コストが、業界団体がLEIの採用統一を当局に求めている理由なのです。」
金融危機からの教訓 — 8年後 (Lessons from the Financial Crisis — Eight Years Later)(2017年1月):「2008年に起きたリーマン・ブラザーズの経営破たんにより、データ品質の重要性が立証されました。リーマンが破たんしたとき、多くの市場参加者はその子会社を通じてリーマンが抱えていたエクスポージャーを認識していませんでしてた。リーマンの破たん後、業界は金融取引の相手方を正確に特定するシステムを声高に求めました。 OFRは、LEIシステムの開発と構築に向けた世界各国の取り組みを主導しました。(…) OFRは金融規制当局におけるその利用を促し、採用の広がりを推進していくことでネットワークの完成を支援しています。金融商品のそれなど、取引主体の識別の厳格化の主なメリットは、複数の用途のためのデータを一度に収集でき、規制報告に対する負担をさらに減らせることです」
Atlantic Council とThomson Reuters主催の Power of Transparency Speaker Series におけるリチャード・バーナーOFR局長の発言(2017年1月):「金融機関に取引報告を義務付ければ、透明性が高まり、価格発見機能が高まり、効率的な市場が促進されます。(…) 現在、当局は以下のような解決策に至っています。グローバルな取引主体識別子制度、つまりLEIは (…)金融データ標準に不可欠です。(…) 50万個のLEIが既に使用されていますが、さらに普及を進めるには、全体での採用が必要であり、それにより十分なメリットが得られる見込みです。(…) 欧州の規制当局はLEIを義務付けていますが、われわれ米国の規制当局は対応で後れを取っています。欧州の規制当局は、ステップアップして、さらに多くのことを実行する必要があります。」
金融データ標準に課される障壁を突破する (Breaking Through Barriers Impeding Financial Data Standards)(2017年2月):「共通基準を設定せずにデータを管理する業界のコストは、推定数十億ドルに達しています。(…) LEIシステムが成長すれば、 業界にとっても同様に、投資にLEIを組み込み必要性が出てきて、LEIシステムを自社の内部データ識別システムにマッピングするインセンティブが高まると思われます」
コレクティブアクション:金融情報のグローバルインフラ構築に伴う厄介な問題の解決に向けて (Collective Action:Toward Solving a Vexing Problem to Build a Global Infrastructure for Financial Information)(2017年2月): OFRが公表した当文書において、規制監視委員会(LEI ROC)のMatthew Reed元委員長と、Chairs Bertrand CouillaultおよびJun MizuguchiのLEI ROC元副委員長は以下のように述べています。「LEIの経験は、すべての問題の解決策になるわけではありませんが、コレクティブアクションの必要性と、今後は統合が進む一方と予想されているのに、これまで度々無視された金融市場のインフラ統合に焦点を当てる必要性が明らかになっています。(…) さらに、LEIの採用を強制する規制は、実現しないと予想する向きもあります。LEIが真に偏在する存在となり、ネットワーク効果の可能性を向上させるために、これらの課題を克服しなければなりません」
2017年5月、XBRL インターナショナルは「ステークホルダーに対して、経験していただき、ご意見を寄せてもらうための新しい LEI 分類」を公表しました。「このLEI分類は、XBRL 報告書内でLEIを使用する規制当局(および企業)に対して、一貫した単一の方法を規定することを目的としています。最終決定がなされれば、このLEI分類は、規制当局と標準の設定機関が公表する報告要件に組み込まれる予定です」LEI分類には、送信されるLEIが GLEIFによって規定された要件に準拠するために、XBRLを埋め込む仕様が含まれます。新分類に関するご意見、ならびにその使用に関する一貫性のある指針を作成するためのご提案を歓迎いたします。XBRL作業部会の取引主体に電子メールでご意見をお寄せください(記事「A Step Closer to Certainty in Global Identity’ below for further information」のリンクを参照)。