取引主体識別子ニュース:2018年7月更新
Global Legal Entity Identifier Foundationは、取引主体識別子の採用に関する最新の世界的動向の概要を提供します
ステークホルダーの皆様が取引主体識別子(LEI)の公開に関する世界的な動向を簡単に把握できるようにするために、Global Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)は、関連した最新情報をブログで提供しています。
概要: 世界金融危機後のLEIの導入により、当局がシステミック・リスクや台頭するリスクを評価し、トレンドを特定して是正措置を講じる能力の強化を当面の目標としたことが背景にあります。世界中の組織は、規制当局とうまく付き合う必要がある一方、取引相手に関して、より賢明で、経済的、かつ信頼性の高い判断を行うためのツールを必要としています。したがって、GLEIFは、組織がコンプライアンスの範囲を超えて考えて、日常業務のプロセスにLEIの採用を検討するよう推奨しています。LEIで主要な参照情報をつなげることにより、金融取引に参加する取引主体を明確かつ一意に識別することができます。GLEIFが提供するグローバルLEIインデックスは、公開されて標準化された、高品質の取引主体参照データを提供する唯一のグローバルオンラインの情報源です。各LEIには、取引主体の所有構造に関する情報が含まれており、「誰が誰か」や「誰が誰の親会社か」という疑問に対する答えも含まれています。
「取引主体識別子ニュース」シリーズのこの最新号では、LEIを含め、金融市場全体への共通でグローバルなデータ標準の採用について、官民セクター両方を代表する市場参加者が引き続き推進している状況に焦点を当てています。グローバルな標準に関する連携は、国際レベルだけではなくローカルレベルでも規制や企業の目標をサポートしていることが一段と明らかになっています。
このブログ投稿は、2018年2月からのLEIニュースをまとめています。このブログの引用元は、「関連リンク」にまとめてあります。
GLEIFは「取引主体識別の新しい未来」と題するレポートを発行
2018年5月、GLEIFは 「取引主体識別の新しい未来」(A New Future for Legal Entity Identification ) というタイトルのレポートを発表しました。これは、GLEIFと調査機関Loudhouseが最近、共同で実施した、顧客の本人確認(KYC)デューデリジェンスを含む金融サービスにおける取引主体識別の課題に関する調査の結果を概要したものです。また、同レポートは、バラバラに存在し分断されている情報を広範なLEIの採用に基づくグローバルに受け入れられるアプローチで置き換えることにより、どのように事業取引の複雑さが解消され、金融サービス会社に数量化可能な価値がもたらされるかを示しています。
銀行は複数の管轄区で営業しているため、グローバルな標準が必要です。LEIは企業に対し、取引主体の検証に関する標準化されたワンストップアプローチを提供します。金融サービス事業は、各顧客組織についてLEIを採用することで、KYCのプロセスをさらに透明化して業務の簡素化を実現することができます。LEIを使用することにより、国際金融市場の安定性を高めて金融データ全体の高い品質と正確性をサポートすることが可能になります。しかし、企業は、よりスムーズなオンボーディング、不一致の削減、ビジネスを失うリスクの低減、貴重なリソースをさらに効率よく使用できるなど、個々に恩恵を受けることもできます。
JPMorgan Chaseの規制関連部門はデータ標準化の行動要請を公表
2018年5月、JPMorgan Chaseの規制関連部門のマネージングディレクターであり、GLEIFの取締役を務めているロビン・ドイルは、「金融サービス業界、世界の規制当局および他のステークホルダーが、現在の欠陥に対処し、革新的な新技術を採用できるデータ標準化の枠組みの達成に向けた進歩を協働して構築していく必要性」に着目した「データ標準化– 行動要請」を公表しました。
今回の行動要請では、「管轄区域全体への金融データと報告標準の適用には、リスク管理と金融安定への影響に関する重要かつ未解決のレガシー問題が残っていること」を明らかにしています。また、金融商品と金融取引に関するグローバルな共通言語を確立して導入すれば、効率が上がり、コストが削減され、その結果として金融データの有用性が向上して貴重な情報が生まれ、システミック・リスクが管理される」と断言しています。行動要請には、LEIへの強い支持が示されています。「この取り組みを支えるために、私たちは以下のように考えています:金融安定理事会(FSB)は、管轄区域への取引主体識別子(LEI)のようなグローバルなデータおよび報告標準の一貫した適用の促進を継続して、採用の進捗を監視しなくてはなりません。」
今回の公表を受けて、行動要請は、グローバルな事業報告標準化団体のXBRLに注目されて更に支持されました。
LEI規制監視委員会が進捗報告書「グローバルLEIシステムと、規制措置におけるLEIの使用」を発行
2018年4月、LEI規制監視委員会(LEI ROC)は、広範囲に検討された進捗報告書を発行しました。GLEIFは、共同でグローバル金融市場の透明性に関する取り組みを前進させることで一致した、世界中の70以上の公的機関を代表しているLEI ROCによって監督されています。同報告書は、「民間部門の参加者が貢献し、FSBが考案したグローバルLEIシステムのガバナンスは、現在完全に導入されており」、「すべての有効なLEI発行者は、システムの技術標準の規定とLEI発行者のコンプライアンスの監視におけるGLEIFの役割を規定する契約の枠組みに従って、GLEIFが認定している」ことを確認しています。また、本書は公的機関がとった対応についても報告し、LEI ROCで代表を務める管轄の当局者は、「LEIを使用して少なくとも91の規制措置を行った事を確認しており、その内容は当報告書に記載されています。[…] 1つ以上の管轄区域に既に採用されたLEIの使用例は、以下のとおりです:
規制報告における[取引の]当事者[およびその仲介者]の識別、数あるメリットの中でも同一の取引主体に関するデータの集約が促進された。
特に国際間またはセクター間における、銀行、保険会社、その他金融機関が報告するデータの比較可能性の強化。
証券化商品に組み入れられた資産の粒度の細かい開示と、これらの資産に対する分析をより費用効果的に遂行する投資家の能力をサポート。」
LEIシステム拡大のサポートの可能性を探るにあたり、同報告書は、「標準の設定機関と管轄区域は、そのニーズを満たすためにLEIの戦略を検討する可能性がある」と断言し、4つの戦略例の詳細は以下のとおりです:
LEIを義務付ける規則・規制数と、かかる規則を適用する資本管轄数を増やす。
一部の管轄区域による汎用識別子としてのLEIの採用。
市場参加者による自主的なLEIの採用。
LEI発行のさらなる普及の促進。
また、同報告書は、自動化は「手数料の一層の削減を可能にする手段」になるかもしれず、「LEIのエージェント・モデル」に基づき、「銀行が顧客の本人確認(KYC)要件について、既に顧客から文書を収集していることを踏まえると、発行コストも規模の経済の恩恵を受ける可能性がある」と示唆しています。同報告書は、「LEIと他の識別子のマッピングは、エンドユーザーにとって価値が増し、他のシステムとの相互運用が促進され、データ検証とデータ品質をサポートし、おそらくユーザーにとってもコスト削減になる」とも指摘しています。
市場情報サービス会社のMLex Financial Services は、 「欧州は、近年における政府の義務付けに後押しされてLEI取得数で米国をかなり上回っています」 […] 「欧州連合(EU)は、企業による取引主体識別子の取得件数が米国の4.5倍に達しており、欧州の方が銀行やファンドのリスク・エクスポージャー、新たなデータ表示のためのツールが多く存在します」と述べています。
金融安定理事会:香港に対するFSBピアレビューで国家のレビューの第一弾が完了
2018年2月、金融安定理事会(FSB)は、香港に関するピアレビューを公表し、FSB加盟国の管轄区域に対する国家レビューの第一弾が完了しました。「香港に対するピアレビューは、金融安定:店頭(OTC)デリバティブ市場の改革と、金融機関の破綻処理の枠組みの2つのトピックが調査されました。今回のレビューは、当局がこれらの領域における改革を導入するために講じた措置に焦点が当てられました。ピアレビューでは、「両方のトピックについてここ数年間、順調に前進している」ことが判明したものの、「追加の作業:取引報告について取引主体識別子の使用を積極的に促進するOTCデリバティブ市場の改革、を行うべきだと結論を締めくくっています。」
香港金融管理局と証券先物委員会はOTCデリバティブの規制制度の今後の強化に関する合同協議の結論を下す
2018年6月、香港金融管理局(HKMA)と証券先物委員会(SFC)は、香港における店頭(OTC)デリバティブ規制制度の今後の強化に関する合同協議の結論を公表しました。市場のフィードバックに基づき、取引報告におけるLEI使用の義務化は、取引を報告する側の取引主体の識別にのみ適用されます。この要件は、2019年4月1日から、新規取引および毎日の評価情報の報告に適用されます。
報告主体は、OTCデリバティブ取引の補足的な報告指図において、明記された識別子のウォーターフォールに従って、取引報告でカウンターパーティの識別を継続しなければなりません。他方、報告主体は、その顧客からLEIを要求するプロセスを確立することが期待されています。規制当局は、今後も報告主体との密な対話を維持し、この領域について海外の動向を見据えて、追加要件のニーズ評価を継続する方針です。
インド準備銀行(中央銀行):個人以外の市場参加者に対するLEIの義務付け
2018年4月、インド準備銀行(RBI:中央銀行)は、他の目標とともに、金融取引に関する規制・監督の強化を目指す様々な開発および規制方針措置を記載したメディア向けの声明を公表しました。注目すべきことは、その声明の中で8番目の項目が、「個人以外の市場参加者の取引主体識別子(LEI)」に関係していることです。この点について、LEIは「世界金融危機後のリスク管理向上のために、金融データ・システムの品質と正確性を改善するための重要な手段と理解されています。」声明では、「RBIは、金利、通貨およ信用市場の店頭(OTC)デリバティブ商品について市場参加者全員にLEIコードを既に導入していると伝えられました。また、大企業の借り手にも適用されました。金融市場の透明性向上に対するこうした取り組みを継続し、金利、通貨または信用市場で個人以外が遂行するすべての金融市場の取引に、LEIのメカニズムを導入することが提案されています。」
2018年6月、RBIは、「デリバティブ以外の市場の参加者に対する取引主体識別子コードの義務付け」に関する指令草案を発表し、2018年6月30日まで銀行、市場参加者、その他関係者から意見を募集しました。
米国:金融調査局は米国のレポ市場で中央清算される取引について、データ収集について設定する規則案について協議
2018年7月、米財務省金融調査局(当局)は、「米国レポ市場の中央清算される取引を対象とするデータ収集について設定する規則案に関する協議を開始しました。[…] 当局が公表した政府機関内の相互的なレポ・パイロット収集に関する概要では、カウンターバーティーの情報が標準化されていないために、データの収集が困難であると指摘されていました。」
当局は、LEIの報告の義務付けを提案しています。「LEIの報告は、適切に維持管理されなければなりません。つまり、GLEIFが導入した標準に従って、最新かつ直近までのデータを維持する必要があるということになります。当局は、LEIの義務付けにより、追加のコンプライアンス費用が多少発生する場合があるものの、モニタリングとレートの算出について、明確で実質的かつ相当なメリットが加わるゆえに、義務付けは妥当で適切であると考えています。[…] 対象の報告主体と取引する各取引主体は、報告取引の件数にかかわりなく、1つのLEIのみの取得を義務付けられます。[…] また、LEIの採用を義務化すれば、システムや企業の[sic ] リスクの監視に必要とされるその他の情報とレポ情報を結合する能力が向上するため、企業と規制当局のメリットになるでしょう。100万社を超える企業がLEIを取得したことを考慮すると、これは特にそうであり、したがって、これらのメリットを得られるようになっています。LEIが広く採用された場合の金融サービス業界のコスト削減総額は、数億ドルに達すると試算されています。」
オンタリオ証券委員会はLEIの取得要件に関する最新情報を公表
2018年4月、オンタリオ証券委員会(OSC)は、デリバティブ市場参加者に対して、OSC規則91-507取引情報蓄積機関とデリバティブのデータ報告に基づくLEIの取得要件について喚起しました。同規則は、「報告するカウンターパーティと指定取引情報蓄積機関(DTR)は、グローバルLEIシステムによって設定された標準に従って、[…]LEIを参照して、すべての取引のカウンターパーティーを識別するように義務付けています。」同規則への準拠に関するコメントとして、OSCは、同規則の初期の導入後に存在していたカウンターパーティのLEIの取得に関するオペレーション上の課題は、最小限に抑えられており、この情報の報告に対する大きな障害はもはや存在しないと想定しています。」
OSCは、引き続き管轄区域におけるLEIの採用の取り込みの進捗状況を監視し、短期的には、「カウンターパーティの報告が必須要件で、この情報の報告に対して法律上の障害が存在しない管轄区域に所在するカウンターパーティのLEIの非報告のモニタリングに注力しています。」
「LEIがなければ望みはない」と題するブログ記事では、グローバルな事業報告標準化団体のXBRLは、LEIの採用について以下のような強力な支持を示しました:「規制当局は、LEIの採用により身元確認を合理化しています。「金融市場で事業展開する企業が既に取得済みのLEIが120万件を超えたことを踏まえると、このグローバル識別子は今や、世界中の規制当局への報告に対するまさに好ましい解決策となっています。[…] 世界中の企業がドメイン名を取得して会社のウェブサイトを構築するまでに時間を要したのと同様に、世界の企業の電話帳が埋まるまでは時間がかかるでしょう。今では多くの環境下において、「LEIがなければ取引はありえません」が規則になっています。近い将来に、「LEIがなければ望みはない」という状況になるかもしれません。」
カナダ投資業規制機構は広範なコンサルテーションの一環として顧客の識別子の改正案を再公表
2018年6月、カナダ投資業規制機構(IIROC)は、市場の健全性の維持、投資家保護、電子取引におけるリスクの緩和のために顧客の識別子の使用を拡大すると同時に、投資会社への影響を最小限に抑える方法について、第二回パブリックコンサルテーションを開始しました。改正案は、「それぞれの注文の顧客の識別子を市場と、IIROCに報告する債券取引の各サイドに送信することを義務付けることになりそうです。機関投資家は、LEIの使用を義務付けられる一方で、個人投資家については、口座番号が義務付けられると思われます。」
「この顧客の識別子の提案により、IIROCは潜在的な市場における不正行為からの投資家保護を向上できるでしょう」と、IIROCの市場規制担当シニア・バイスプレジデントのヴィクトリア・ピニングトン氏は説明しました。「規則の導入に最適なアプローチを決定するにあたり、改正案の影響と費用を把握するために、業界との連携に尽力しています。」提案に対するコメントは、2018年9月26日まで募集されています。
欧州連合(EU):欧州証券市場監督局はMiFID II / MiFIRに基づくLEI関連の暫定的な取り決めを終了
欧州証券市場監督局(ESMA)は2018年6月20日に、2017年12月に導入された欧州連合(EU)が改正した第2次金融商品市場指令(MiFID II)と金融商品市場規則(MiFIR)に基づく暫定的な取り決めについて、「これ以上延長されることはない」ことを確認しました。MiFID II / MiFIRは、2018年1月3日に施行されました。6カ月間の経過期間は、「2018年7月2日まで(同日を含む)となります」とESMAは述べました。2017年12月20日、ESMAは、「投資会社が顧客の代わりにLEIコードを適用するために必要な書面をサービス提供前に当該顧客から取得することを条件に、あらかじめLEIコードを取得していない顧客に対して取引報告を提出する義務が生じるサービスを提供することができる6カ月間の経過期間」を認めると通知しました。ESMAと各国の所轄官庁は、「MiFIRに基づくLEI要件のスムーズな導入をサポートするために付与した、当初の6カ月間の期間を延長する必要はないと結論付けました。」MiFIRによると、投資会社は、関連報告義務が発生するサービスを提供する前に、顧客から取引主体識別子(LEI)を取得する必要があります。
ESMAの業務執行取締役のヴェレナ・ロス氏:「多くのステークホルダーは、LEIがすべての規制目的に使用できる標準的な汎欧州の識別子となることを求めています。」
「MiFID II – LEIにとって重要なステップ」と題する講演において、欧州証券市場監督局(ESMA)の業務執行取締役のヴェレナ・ロス氏は、2018年6月27日にこのように述べています: 「LEIの規則が専門的に見えるかもしれないように、LEIの規則は金融市場にとって、そして規制当局のみならずあらゆる投資家にとっても根本的に重要です。」
「金融危機後、金融市場の透明性の向上は、世界中の規制改革の主要目標の一つとなっています。MiFID IIは、EUの金融市場に対するこれらの改革の重要な柱の一つです。」また、ESMAのロス業務執行取締役は、MiFID II規則は「EUの投資会社の顧客全員はLEIを取得する必要があることを意味すると強調しました。これは、「LEIがなければ取引はありえません」規則として知られており、EUの企業に対して、LEIを取得していない顧客の指図に従った行動を禁止しています。つまり、LEIコードは、EU市場へのアクセスを望む顧客にとって前提条件となっています。」
結論において、同氏は次のように指摘しました:「最初にやや努力が必要であるとはいえ、様々なEUの要件におけるLEIの一貫した使用は、業務の複雑性を低減させ、最終的にコンプライアンスに対する費用が減少することから業界に具体的な利益をもたらすということを強調したいと思います。多くのステークホルダーは、LEIがすべての規制目的で使用できる標準的な汎欧州の識別子となることを求めています。」
イングランド銀行は、「最適な企業の識別子」とされるLEIの組み込みの望ましさを含む即時グロス決済システムの再構築に関する協議を実施
2018年6月21日の講演において、マーク・カーニー・イングランド銀行総裁は、特に「英国のすべての決済の中心となる即時グロス決済(RTGS)システムの再構築」について演説しました。カーニー総裁は次のように指摘しました。「RTGSのオーバーホールを行っているので、イングランド銀行は、英国の金融システムがビッグデータの約束を実現しやすくなるようにしています。新たなRTGSでは、国際的なベストプラクティスを定義する形式で実行されたあらゆる決済に関するデータをかなり豊富に取り込めるようになります。イングランド銀行は現在、最適な企業の識別子とされる取引主体識別子(LEI)の組み込みの望ましさを含め、この実施方法について協議中です。」
「これにより、国内のみならず世界各国の金融システムに対するアクセスが改善され、企業のエンドユーザーにとっての選択肢と競争の拡大が後押しされ、マネーロンダリング・テロ資金供与対策が前進すると思われます」と、カーニー総裁は付け加えました。
Center for Global Developmentの報告書:新技術はリスク回避のジレンマに対処できるか?
2018年2月、Center for Global Development (CGD) は報告書「AMLの解決: 新技術はリスク回避のジレンマに対処できるか?」を公表しました。同報告書は、著者が知る限り、2014年に公表されたCGDの報告書で特定されたマネーロンダリング対策(AML)の「リスク回避」、テロ資金供与対策(CFT)方針の問題解決となる6つの新技術を評価した初の包括的な取り組みです。新技術は、顧客の本人確認(KYC)ユーティリティ、ビッグデータ、機械学習、分散型台帳技術(DLT)、生体認証、そして特にLEIなどです。同報告書は、これらの「(使用中や近い将来使用される)新技術は、AML/CFTのコンプライアンスの実施が容易になる可能性があり、そのため銀行の費用効果計算が傾き、貧困国の顧客のコルレス銀行の口座保有が実現するかもしれません」と断言しています。
LEIに関連して、CGDは以下のように強く主張しています:「LEIの採用がさらに拡大すれば、依頼人や受取人を識別するために決済メッセージにLEIを含めるようになり、国際的な決済の透明性がさらに強化されます。ただ、これには、決済メッセージのフォーマットと銀行のITシステムの変更、ならびに金融セクター以外や発展途上国におけるLEIの広範な採用が必要になるでしょう。」また、同報告書は、「取引主体、つまり金融機関、事業会社、政府機関、非営利組織(NPO)のみが、LEIの適用対象です。自然人は、個人事業主などの取引能力を持っている場合を除いて[…] 資格取得の対象外となっています。[…] LEIは自然人を適用範囲としないため、金融取引に従事する個人の識別には別の標準が必要です」と指摘しています。とはいえ、将来的には、「LEIが決済の依頼人と受取人の識別に使用される可能性があり、したがってKYCがより簡単により正確になります。」
また、同報告書は、金融機関に登録エージェントになることを奨励する、つまり取引主体に対してLEI発行者のネットワークへのアクセスを支援するGLEIFのキャンペーンに関する言及など、規制当局、政策決定者、標準化団体がAML/CFTへのLEIの適切な採用を促進するために行っていることの概要を示しています。規制当局、銀行、金融機関に加えて、標準化団体やISOなどの様々なステークホルダーへの有益な政策提言も盛り込まれています。
金融安定理事会はコルレス銀行業務の縮小への対処に関する進捗報告書を公表
2018年3月、金融安定理事会(FSB)は、コルレス銀行業務の減少への評価と対処のためのアクションに関する進捗報告書を公表しました。同報告書は、2017年7月の更新以来のFSBの4項目のアクションプラン導入のためにとられたアクションをクローズアップしており、またLEIの導入継続の重要性を次のように強調しています:「…顧客の本人確認(KYC)ユーティリティ、最近公表された決済メッセージへ取引主体識別子を含めるオプション、これらのメッセージに使用する業界標準などのCPMI [決済・市場インフラ委員会]の提言をフォローアップする業界の取り組みの導入を継続する作業が必要です。」
GLEIFは、固有商品識別子(UPI)のガバナンスに関して、第二回協議で金融安定理事会と対話
2018年4月、FSBは、第二回の協議文書において、OTCデリバティブ取引報告の主要データ要素である固有商品識別子(UPI)に関するガバナンスの検討に対するパブリックコメントを募集しました。この協議は、2014年に実施されたOTCデリバティブのデータ集約に関する実現可能性調査を基礎としており、「グローバルな集約に関する決定に関係なく、取引主体識別子(LEI)のグローバルな導入、UPIと個別取引識別子(UTI)の制定など、重要なデータ要素の標準化と整合化作業の完了が重要であると指摘しました。」
GLEIFは、2018年5月に協議に対して回答し、資金調達、パートナーシップ・モデル、固有商品識別子の参照ライブラリに関連する様々な問題について意見を提供しました。GLEIFは、「固有商品識別子」、つまりUPIは、官民連携で統治されるべきであると協議への回答に記載しました。」
GLEIFは米国を代表するData Foundationと対話
2018年4月、Data Foundationは米国の代表としてGLEIFと「情報のルートとしての役割、規制対象の取引主体を追跡するためのLEIを使用した政府機関の成長中のネットワークの構築への取り組み」について対話したことを発表しました。
Data Foundationは米国初の業界専門のオープンデータ調査機関です。調査、教育、プログラミングを通じて、Data Foundationは、標準化されたオープンデータとして政府情報の公開を支援しています。
グローバルLEIインデックスによって、GLEIFは、標準化された品質の高いオープンな取引主体参照データを提供する唯一のグローバルなオンラインソースを利用できるようにします。それにより、GLEIFは、人、企業、政府機関がビジネスを行う相手についてより賢く、低コストで、信頼性の高い判断を下すことができる手段を提供しています。世界中において、実務へのこの影響を目にしています。Data Foundationとの連携は、グローバルなLEIの採用と米国の相互運用可能なデータ標準に取り組んでいるパートナーのネットワークの正式化に伴うメリットに関する認識を築く助けになるでしょう。
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