単一電子フォーマット(ESEF)への準拠を前倒しで行い、これにより作成したGLEIFの2019年度年次報告書において、LEIの埋め込みのメリットを紹介
GLEIFは、信頼性を高めデータ集約を容易化するために、ESMAのESEFの義務付けに基づく機械可読のデジタル財務文書にLEIをどう組み込むべきかについて紹介し、追加のベストプラクティスとして、LEIを電子署名に組み込むことがどれほど簡単であるかを明らかにしています。
GLEIFは、人間と機械が可読なインラインXBRLとHTMLの形式で、年次報告書とGLEIFの署名する執行役員のデジタル証明書の両方に取引主体識別子(LEI)が埋め込まれた年次報告書を2年連続で公表しています。今回、XBRL InternationalとWorkivaと連携し、欧州証券市場監督局(ESMA)と協力して同報告書を作成しました。
こうした動向には、欧州連合(EU)の規制市場の対象証券の発行体すべてに対して、極めて重要かつ貴重なメッセージが盛り込まれています:
- GLEIFは、EUの新規制に自主的に準拠した先駆け的な存在となり、同規制は、2020年1月1日以後からの年次報告書を作成する発行体に電子報告形式、欧州単一電子フォーマット(ESEF)の義務付けを決定しました。
- 2つ目は、文書にLEIを埋め込むことで、GLEIFは、発行体がESEFの必須要件をどのように満たせるかを明らかにしています。
- 3つ目は、署名する役員の電子署名にLEIを埋め込むことで、GLEIFは、概念実証を通じて、文書の真正性と完全性に対するエンドユーザーの信頼を得られるベストプラクティスの追加手段を組み込むことがどのぐらい簡単なのかを明らかにしています。
財務文書にLEIを埋め込む:公共財の進化
私たちの多くは社会の安全を守るために重要かつ非常手段を取る時に、集団的努力と「協働」感の結果として生じうる公共財についてその時点で鋭敏に察知します。こうした所感の姿勢で、2019年度年次報告書の発行により、GLEIFとそのパートナー企業が進化を明らかにすると同時に、市場参加者の最善の利益となるアプローチを調整するために、金融業界に強く働きかける機会が得られると思っています。
「顧客がESEFの準拠に向けて取り組んでいることから、当社のプラットフォームとサポートチームが絶えず利用できるようになっていることを私たちは誇りに思っています。インラインXBRL形式のグローバルリーダーとして、Workivaは、報告およびコンプライアンスにおけるデータの透明性と信頼性の向上を目指す数千社を支援しています。」 - WorkivaのMarty Vanderploeg最高経営責任者(CEO)。
GLEIFは、すべての発行体に対して、ESMAが指定した新たな単一の電子形式であるESEFへの準拠に向けた取り組みを強化するよう強く働き掛けています。
財務文書へのLEIの埋め込みを義務付けるESMAは、ESEFの要件にタイムリーかつクオリティの高い準拠を提唱するGLEIFの努力を強く支持しています。
スティーブン・マイヨール局長は、以下のように述べています:「ESMAは、ESEFに従って作成した報告書にどのようにLEUを埋め込むかを含め、ESEFの要件に準拠してどう作成すべきかについて、自主的に例を示したGLEIFの取り組みを賞賛します。ESMAは、LEIが市場参加者の固有かつ永続的な識別を実現できる唯一のデータ要素であると考えています。こうした理由から、ESMAが示すESEFの要件では、電子形式で作成する年次報告書に対して、LEIの識別子の使用を義務付けているのです。」
このアプローチが金融市場の関係者にもたらす大きなメリットは以下のとおりです:
- LEIに基づき提出企業のIDを簡単に検証できるため、文書の真正性と完全性に対するエンドユーザーの信頼性が高まります。
- 提出企業の集計データへの自動アクセス。これにより、次のような複数のメリットが生じます:グローバルLEIインデックスで入手可能な取引主体の参照データの可視性が向上します。LEIを所有する取引主体の主要データ資産を収集した新たなオンライン・データベースの構築の機会が生まれます。標準化された財務情報の比較可能性を裏付ける複数の情報源から取得した企業に関する情報を簡単に集約できます。
- 取引主体の所有構造に関して、エンドユーザーにとっての透明性が向上します。提出企業、その関連会社、子会社、親会社のLEIが機械可読な財務報告書に埋め込まれていれば、LEI間の関係性ネットワークを迅速かつ自動的に確定できます。
- 規制当局者が市場における不正行為を最小限に抑える能力が向上します。
さらに、GLEIFは、すべての発行体に対して、GLEIFの例に従い、次の追加ステップとして、年次報告書を提出する際に自社の決算書の署名にLEIを埋め込むよう強く推奨します。このアプローチを多数が導入すれば、業界全体の利益につながります。信頼性の向上、データチェック手法の強化、不正の減少などにより、規制当局とあらゆる金融業界の市場参加者が恩恵を受けると思われます。
「GLEIFの2018年度および今回の2019年度の年次報告書は、XBRL標準を組み合わせたことで、LEIは信頼性と透明性を向上させるための強力かつグローバルな手段となることを実証しています。これは、あらゆる地域の企業、政策決定者、規制当局にとって重要な指標として役立つでしょう。」 - XBRL InternationalのJohn Turner最高経営責任者(CEO)。
LEIは報告の枠組みを超える:経済の安定性とデジタルトランスフォーメーションを支援
足元の世界規模のパンデミック(世界的流行)を幅広い文脈で考慮すると、経済の安定と成長の促進の後押しを行うにあたり、LEIが提供する信頼性と透明性に加えて、LEIが果たす貴重な役割も考慮すべきなのです。グローバルLEIシステムは、市場の透明生と効率の促進、リスク管理とリスク評価の向上、金融の安定の支援を目的とした広範な公共財として運営されています。同システムは、2008年に起きた金融危機を受けて設置されました。今後数カ月間における経済の不確実性が一層大きく高まる時期を乗り切る体制を整えていることから、その責任はさらに緊急性が強まっています。
また、LEIは、世界でデジタル化が一段と進んでいるため、重大な役割を担っています。銀行業務からサプライチェーン管理に至るまで、どの業種も処理と取引でデジタル化を調整しています。データ管理やサプライヤーと顧客とのやり取りに対する自らのアプローチを組織が再考しているため、アジャイルな市場参入者は、新たな技術を取り入れて伝統的なビジネスモデルに取り組み、世界のデジタルトランスフォーメーションをリードしています。
デジタルの世界では、信頼の役割は良好な関係のカギを握ります。取引条件の成功は、誰が誰と取引しているかの確実性に左右されます。こうした観点から、アイデンティティ管理は、すべてのデジタルトランスフォーメーションの中核になるのです。グローバルLEIシステムは、真に相互運用が可能で、ベンターや消費者のユーザーの囲い込みを防げる方法で、デジタルトランスフォーメーションを実現するために一意的に導入されています。グローバルLEIシステムは、世界規模で取引主体に関する信頼問題を解決しています。LEI規制監視委員会(LEI ROC)によって監督され規制機関により承認されたシステムとして、世界に認められモニタリングされて標準化された取引主体のグローバルIDを設定する唯一のシステムであり、国内のIDシステムとリンクしています。このシステムは、オープンデータによって支えらえています。つまり、あらゆる個人や企業が取引主体識別子(LEI)とその関連する参照データにアクセスできるということを意味します。さらに、グローバルLEIシステムよって、あらゆる取引のカウンターパーティを識別するツールとして、従来の処理とオンライン処理とのギャップが埋められ、リポジトリに保存された取引主体のデータを集約できます。
2019年度GLEIF年次報告書はこちらをご覧ください。
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著者について:
シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。
ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。
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顧客関係管理, データ管理, デジタル識別, Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF), グローバルLEIインデックス, 顧客の本人確認(KYC), LEIのビジネスケース, オープンデータ, 店頭(OTC)デリバティブ, リスク管理, 標準