米連邦政府のための包括的な取引主体識別の構想
この新しいレポートの調査結果は、公的機関が未だに複数の識別制度に依拠している管轄区域の規制当局への情報提供として役立つ可能性があります
過去数年間、多数の管轄区域の規制当局は、リスクを評価し、是正処置をとり、市場における不正行為を最小化し、金融データの正確性を向上させるために、取引主体識別子(LEI)の使用を義務付けてきました。世界中の公的機関の代表者で構成されるLEI規制監視委員会(LEI ROC)は、金融市場の透明性の向上に尽力しており、それぞれの管轄区域がそのニーズを満たすためにLEI戦略の採用を検討するよう勧告しています。2018年4月に公表されたLEI ROCの進捗報告書は、「それによって、様々な種類の取引主体を対象とする複数の識別子が国内に存在する状況の打開が促され」、「[グローバルLEIシステム]が開発したインフラを国家が活用できるようになる」可能性があると指摘しています。
これを前提に、Global Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)と米国を拠点とするData Foundationは協力して、米国連邦政府機関によるLEIの採用がどのように取引主体識別を合理化し、金融市場に、およびその範囲を超えて、メリットをもたらすかを調査しました。この目標を達成するために、現時点で米国政府に導入されている取引主体識別システムについて、包括的な調査を実施しました。この調査結果をもとに、GLEIFとData Foundationは、レポート 「米連邦政府のための包括的な取引主体識別の構想」(Envisioning Comprehensive Entity Identification for the U.S. Federal Government ) を発行しています(以下でダウンロードできます)。
GLEIFとData Foundationの共同調査レポートの内容は以下の通りです:
米連邦政府機関の取引主体識別に関するニーズの現状を調査して、それぞれが使用する取引主体識別システムを説明。
グローバルLEIシステムと、米国で現在使用されている他のシステムを比較。
米連邦政府機関が、固有または内部の識別子をLEIに置き換えることでどのような恩恵を得られるかについて特定。
特定の米国の取引主体識別システムから、LEIを基盤とする包括的な取引主体識別システムへの転換の実現可能性を説明する要因、またはLEIに対して既存の識別子をマッピングする価値を説明する要因を提案。
今回の調査からは、米連邦政府が50もの個別の取引主体識別システムを使用しており、そのすべてがばらばらで互換性がないことが明らかになりました。したがって、各識別子は、未だに多数の連邦機関の任務にとって非常に大きな課題となっています。規制機能、統計機能、調達機能、または支援機能を履行するために非連邦の取引主体を追跡する機関は、自ら取引主体識別システムを構築するか、あるいは別の機関がもともと構築したシステムを採用するかのいずれかを行う必要があります。どちらのアプローチでも、取引主体の照合と法人形態の適切な割り当てが問題となります。
米国連邦政府は50もの個別の取引主体識別システムを使用
グラフに記載された略語の用語集については、GLEIFとData Foundationの調査レポートの付属書類を参照してください。
LEIを基盤とする包括的な取引主体識別システムは、適切に導入されれば、市場のリスクの特定と緩和、業績の悪いの請負業者の追跡と除外、サプライチェーンの効率向上に寄与する可能性があります。また、規制当局、統計専門家、契約・助成金担当オフィサー、企業の担い手、調査員は、様々なセクターや業種において、取引主体がどう行動して、政府と交流しているかを理解し、米国における経済および組織活動についての全体像を把握できるでしょう。
すなわち、GLEIFとData Foundationの共同調査レポートは、包括的でオープンかつ標準化された取引主体識別子システムは、政府対企業の関係が存在するあらゆる所で有用となる可能性があることを示しています。LEIは、この目的をかなえることができるでしょう。
GLEIFは、世界中の政府に対して、LEIを基盤とする標準化された取引主体識別への移行を考慮するように求めています
GLEIFは、本調査レポートの結果が、公的機関が複数の識別制度 (その一部は専有) に依拠し続けている、米国以外の管轄区域の規制当局への情報提供に役立つ可能性があることを強調します。LEIは、市場、商品、地域の全てにおいて取引主体を識別する共通システムの非常に重要なニーズに対処するものです。LEIが広範囲にわたり採用され、その結果として、グローバルLEIインデックスを通じて、公開され、標準化された高品質の参照データにアクセスできるようになれば、あらゆる国のステークホルダーが相互運用性と総合関連性を向上させることが可能になります。
LEIに基づくカウンターパーティの識別が容易になることで自動化とデジタル化の道が開かれ、企業や市民がデジタル市場に容易かつ安全に参加できるようになるでしょう。また、標準の取引主体識別子としてのLEIと提携すれば、規制にって取引主体識別子を義務付けられている企業のコストと負担が大幅に減ることも考慮すべきです。国内外両方のレベルで規則と規制への遵守を確保するために、多種多様な国内および固有の識別子を取得する必要があることは、特に中小企業にとって重荷となっています。
LEIの利点は、金融取引に関わる全ての人にとって極めて重大です。カウンターパーティの識別と確認に必要なプロセスにLEIを導入することによって、業務効率の改善、コスト削減、取引時間の削減、情報の信頼性の向上を実現することができます。また、LEIは、金融市場およびその範囲を超えて、透明性を向上させるという公的機関の目的を支えています。
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著者について:
シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。
ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。
この記事のタグ:
コンプライアンス , データ管理 , Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF) , グローバルLEIインデックス , LEIマッピング , オープンデータ , ポリシー要件 , 規制 , リスク管理 , 標準 , 規制監視委員会(ROC)