暗闇の中でビジネスを行うのはやめましょう:データ品質管理により、明確なビジネス情報で道を照らすことができます
オープンで正確かつ適切な取引主体識別データの利用可能性は、これまでになく重要になっています。当ブログでは、その理由を探っていき、この重要な領域でのGLEIFの主力イニシアティブを振り返っていきます。
信頼は経済の中心となる柱です。信頼というものが、デジタル化とグローバル化が進んだ経済においてはこれまで以上に重要になっている理由は、取引主体の取引ややり取りの件数が増加基調をたどっており、今後もその基調が続くと予想されるからです。こうした新しい環境では、企業と当局による身元確認はより重要であるばかりか、正確に実行することがより困難になっています。すべての関係者の透明性は、持続可能な投資、適格な報告または分析の前提条件です。しかしながら、信頼と透明性の実現するには、あらゆる企業は国際的に識別可能となり、高品質で正確なデータに裏付けられる必要があります。
2023年の関連トピックをみてみると、データガバナンス、データ品質および透明性の向上、整合化と相互運用性、データの検証などの重要な問題がすぐに思い浮かびます。しかし同様に、データ関係の規制も重要な問題の一つとして注目されると思われます。ほんの数例を挙げると、金融データ透明化法(FDTA)、EUオープンファイナンス、PSD2、EUのAI法、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)などがあります。
社会と経済にとって最も差し迫った課題にデータ品質の重要な要素がもたらす影響を理解することは、かなり重要です。データの有用性は、相互運用性と標準化次第でしょう。2つの基本原則に関して言えば、クロスボーダー取引とサプライヤーのグローバルな性質を考慮して、取引主体の識別と検証にグローバルスタンダードを活用することの関連性が明らかになっています。データと相互運用に関する共通標準が存在しないことは、次世代のデジタル・インフラが存在せず、イノベーションが阻害されている一因です。
相互運用可能で独立性と自律性を備えた方法でデジタルトランスフォーメーションを実現
企業と中小企業の両方にとって、経済成長、イノベーションおよび競争力の推進に関して言えば、データ品質、相互運用性、およびグローバル標準が重要な役割を果たします。データはグローバル市場により高い透明性をもたらし、犯罪の意図を減らし、より持続可能なビジネス上の意思決定につながりますが、データをすべての関係者が労力をほとんどまたはまったくかけずに利用できて、信頼できる場合に限られます。
オープンファイナンスの動きをめぐる最近の展開は、この考えを探求する際の出発点として役立ちます。欧州の金融データスペースに関する専門家グループは最近、その報告書の中 で以下のように述べています:「LEIは、標準化されたデータの識別と集計の促進、データ品質と透明性の向上、検証チェック関連のコスト削減により、オープンファイナンスにおいて重要な役割を果たせます。データがLEIなどの構造化された識別子を利用してデータを標準化して整合化された方法で収集されれば、データ共有が可能になります。さらに、LEIを利用すれば、公開されたグローバルLEIリポジトリを通じて、シームレスな方法で金融サービスプロバイダーとその他の取引主体の当事者の識別を促進できます。データアクセスについては、LEIは、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)の機能でも重要な役割を果たせるでしょう。」
金融安定理事会は、世界の標準設定機関と国際機関に対して、金融、銀行、決済の分野において、その業務上で今後LEIの参照を推進するように奨励した報告書 を2022年に公表しました。クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップの一環として公表されたFSBの報告書では、主な短期的なゴールとして、最初にクロスボーダー決済取引へのLEIの使用を促進しなければならないとしています。LEIは、これらの取引の迅速化、コスト引き下げ、透明性向上、さらなる包摂の達成を支援することにより、こうした取引の安全性とセキュリティを維持することで、G20ロードマップのゴールをサポートするとFSBはみています。
他にも、英国の国際商業会議所(ICC)による報告書 では、取引主体識別子(LEI)などの既存技術、デジタル台帳、請求書番号の追跡、収益部門と銀行との間のAPI、ならびに規制当局による銀行との詐欺データの共有実現を呼びかけており、そのいずれもシステムから詐欺師を締め出すのに役立つとみられます。
グローバルLEIシステム(GLEIS)には、世界規模で取引主体に関する信頼問題を解決する固有の機会があります。相互運用性、独立性、自律性を備えた方法でデジタルトランスフォーメーションを実現できます。ISOが定めた共通の識別標準および所有構造を含む主要な参照情報に取引主体を関連付けるコードとして、LEIは国境を越えたデータ照合問題に取り組み、相互運用可能なID標準を促進します。
データを利用してより素早くより慎重により持続可能な意思決定を実現
例えば、環境・社会・ガバナンス(ESG)の報告などです。投資家にとって、投資先企業の身元とその企業の組織構造を検証するためにLEIデータを活かせれば、その責任投資が強化され、詳細な情報を得た上で意思決定を行えます。企業の子会社、親会社、持株会社の名称、所在地、法人形態について透明性があり最新かつ正確な概観を得るには、投資の性質とシステミック・リスクを完全に理解するすることが不可欠です。こうした質が高く正確な取引主体のデータがなければ、ESGレポートは、パフォーマンス指標を評価し、持続可能な投資を促進する手段としての価値を失います。
LEIは、世界中の企業や法人構造を明確に識別するための信頼できるデータを組織に提供する唯一のグローバルソリューションです。
世界のビジネス界は、LEIの採用拡大だけでなく、グローバルLEIインデックスを通じて世界中の誰もがどこにいても自由に利用できるオープンなLEIデータセットの利用からも恩恵を受けられる立場にあります。こうしたリソースの活用は、以下のさまざまな要因に左右されます:各LEI記録に含まれるデータ量、どのぐらいデータが正確性で最新性であるかを含むそのデータの品質、データセットをどれだけ深く様々な方法で調査できるか、そして規制監督機関、独立したデータサービスプロバイダー、サプライチェーンのデューデリジェンスを実施する個々の法人などそのリソースを使用するさまざまな組織にとってどの程度アクセスしやすいかという点が挙げられます。
幸いにも、グローバルLEIインデックスに含まれたデータ品質は、厳密なデータ品質管理が功を奏して既に高水準に達しています。こうした状況は、個々の取引主体レベルでのデータのガバナンスとコンプライアンスにメリットをもたらし、そのプラットフォームで正確かつ信頼できる取引主体の識別を活用しようとする、信頼できるオープンデータのイニシアチブの基盤となっています。
GLEIFは、オープンで正確かつ適切な取引主体識別データをすべての人が利用できるように絶えず改善することにコミットしており、そのコミットメントを促進するために設計された多数のイニシアチブに取り組んでいます。それを説明するために、これらの主力プロジェクトの一部に光を当ててみましょう。
データドリブンの気候と整合した投資の加速
透明性と説明責任は、効果的な環境スチュワードシップと世界規模の持続可能性の取り組みを支えています。企業が投資先の気候変動関連リスクを評価する際にLEIデータがいかに重要な役割を果たせるかを実証するために、GLEIFは2022年にLinux FoundationのOS-Climateイニシアチブに参加し、オープンソースの気候データと分析ソリューションにおける信頼と透明性の促進を支援しました。
OS-Climateは、Linux Foundationが主催するメンバー主導の非営利組織であり、気候リスクの管理と、低炭素で弾力性のあるソリューションへの投資の加速に重点を置いたオープンデータとオープンソースの分析プラットフォームの開発に取り組んでいます。このパートナーシップにより、Amazon Sustainability Data Initiative (ASDI) のデータカタログを介して、リアルタイムにLEIデータをクラウドで公開できています。このデータを、炭素排出量や気候予測などの他の重要な気候関連データセットと共に容易に利用できるようにすることで、投資家はより環境に配慮した金融および投資に係る意思決定を行うことができます。
ELFコードの自動割り当ての実現
取引主体識別データを進化させるというコミットメントに沿って、GLEIFは、ISO 20275標準に基づいて、当局のソースと割り当てられた法人形態(ELF)コードリストの提供物を定期的に分析します。
後者については、GLEIFそのパートナーであるSociovestix Labsは、2022年に機械学習ツール であるLegal Entity Name Understanding (LENU)を開発し、そのツールは取引主体の名称と管轄区域に基づきELFコードを自動的に割り当てます。LENUは現在、GitHub で自由に利用できます。
LENUは、LEIデータを使用して管轄区域固有のモデルを構築し、ユーザーが任意の法人名に法人形態の候補を取得できるようにします。GLEIFは、ツールによって示唆された法人形態と現在のLEIデータのELFコードを比較するデータ品質ループを確立しました。モデルの結果と現在のLEIデータの間に明らかな不一致がある場合、GLEIFは必要に応じて正確な検証とデータ記録の更新のためにLEI発行者に送信されるデータチャレンジを作成しました。更新されたデータはその後、データソースを改善してモデルの次バージョンを構築するために使用され、最終的にモデルのパフォーマンスは向上します。このツールは、機械学習のアルゴリズムがデータ品質の評価と改善にどう適用できるかを示す事例です。
新データ・フォーマットと報告の導入によるデータ品質の強化
2022年において、ファンドの関係性に関する方針と投資ファンドの登録に関する指針、以前は(「コーポレートアクション」と呼ばれていた)取引主体のイベントとデータ履歴、政府機関全般に対するLEIの適格性に係る、3つのROCの方針 を導入して、グローバルLEIシステムにとって重要なマイルストーンを達成しました。これらの新しいデータフォーマットでは、LEI記録に含まれるデータの範囲が拡大し、グローバル市場での透明性がさらに一段と向上し、あらゆる地域のユーザーにとってグローバルLEIインデックスの有用性が広がりました。
LEI発行者の取り組みをサポートし、システムの安定運用を確保するために、GLEIFは、合計118個のデータ品質の確認項目を含む規則の設定バージョン3.2の改訂版を公開しました。2022年4月に新しい規則の設定が施行された結果、合計データ品質スコアの平均は99.98から99.77に大幅に低下しました(図表1を参照)。
図表1:2022年の合計データ品質スコアの月平均
一連のデータ品質の確認が導入された場合に、こうした動きを示すことは想定されていました。例えば、2021年8月に99.71へと低下したのは(図表2を参照)、新しい規則の設定の導入が主な原因でした。2022年にGLEIFは、3つのROCの方針の新規要件に準拠するために34個の新たな確認項目を導入し、それ以外にも40項目を更新して、LEI発行者は残りのデータ品質の不備を直ちに修正しました。これは、LEI発行者が過去数年間に得た経験と、データガバナンスの事前チェック機能を活用したおかげで達成されました。
プロアクティブな事前チェックAPIは、LEI発行者がシステムに入る前にデータ品質の問題点を特定できるようにするために、GLEIFによって導入されました。最終的に、合計データ品質スコアの平均は、今年最後の四半期に99.97で安定しました。
図表2:2020~2022年の期間における合計データ品質スコアの月平均
2022年において 、達成された成熟度は、合計データ品質スコアの平均と同様の曲線を描き、より高い成熟度(期待される品質および素晴らしい品質のレベル)を達成したLEI発行者の数は、新方針が施行された際に10組織減少しました(図3を参照)。
図表3:2022年に定義された成熟度を達成したLEI発行者の平均数
ただし、過去3年間の展開は、成熟度の実績の継続的改善を示しています(図表4を参照)。こうした改善をみせたきっかけは、2021年に新規や更新されたLEI記録をGLEIFのデータガバナンスの事前チェック機能に送信する要件が導入されたことでした。この機能は、現在の規則の設定に適用されており、データ品質結果のプレビューだけでなく、潜在的な不合格の理由も提供します。データガバナンスの事前チェック機能 を活用したプロアクティブなデータ管理は、成熟度に関して大きな変革をもたらしたことは間違いありません。
図表4:2020~2022年の期間に定義された成熟度を達成したLEI発行者の平均数
透明性の向上でデータ品質のレベルが変化
昨年、GLEIFは、インタラクティブな データ品質のダッシュボード(Data Quality Dashboard) を公開しました。それ以前は、GLEIF、LEI発行者、ROCのメンバのみが利用可能でした。この革新的なツールを使用することで、世界のデータユーザーは以下のことを実現できるようになります:
データ品質に関連するKPIを毎日モニターする
ユーザーが定義した期間で様々な統計を分析する
GLEIFのデータ品質の確認の背後にある原則を理解する
LEI発行者のパフォーマンスを比較する
単一のLEIのデータ品質を調査する
LEIデータに対して行われたデータへのチャレンジを調査する
上記の、そしてその他のデータ品質とデータガバナンスに関するイニシアチブの推進は、2023年も引き続きGLEIFの主要な優先事項であり、今後数か月にわたってGLEIFの勢いの継続についてのニュースを共有できることを楽しみにしています。
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