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世界中の企業の点を取引主体識別子で繋ぐ:「誰が誰を所有しているか」についてのデータ収集についての進捗報告

GLEIFは2016年の年末までに、五社の「先発」LEI発行者と試作品演習を開始します


著者: シュテファン・ヴォルフ

  • 日付: 2016-09-28
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グローバル取引主体識別子(LEI)システムは、最終的に次の三つの質問に答えるように設計されています。誰が誰なのか?誰が誰を所有しているのか?誰が何を所有しているのか?言い換えると、一般に公開されたlEIデータプールは、金融市場の透明性を大幅に高めるための国際的なディレクトリーとみなすことができます。

取引主体の公式名称や登録住所など、今までにLEI参照データとともに入手可能になっている情報は、「レベル1」データと呼ばれます。それが「誰が誰」なのかという質問への答えを提供します。次のステップで、LEIデータプールに「レベル2」データが加わり強化されます。このデータは「誰が誰を所有しているか」という質問に答えてくれます。

関連するGlobal Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF)で以前報告したようにブログポスト、2016年3月に、LEI規制監視委員会(LEI ROC)が、「グローバルLEIシステムでの法人の直接的最終的な親組織についてのデータ収集-フェーズ1」という題名の文書を発行しました。

GLEIFは、プロジェクト管理と、親情報を集めるためにLEI発行組織が必要とする組織的および技術的標準の開発を担っています。このブログポストは、プロジェクト展開についての進捗報告を提供し、次のステップについて通知しています。

このブログポストの引用元は、「関連リンク」にまとめてあります。

見通し:世界中の企業の点をオープンで、標準化された、高品質のLEIデータで繋ぐ

『企業の点を繋ぎ、本物の透明性を』と題した記事で、フィナンシャル・タイムズ紙は最近「2008年のリーマンブラザーズの破綻によって引き起こされた悪影響に対処するために、監査機関は苦闘した。リーマンブラザーズは世界中の3,000近い異なる法人と取引していたためだ。」と振り返った。必要なのは、「アナリストが異なる国の管轄に渡って散らばった企業間に存在する繋がりを追跡するための方法だ。(…) これらの多くは国の登録簿には記載されているが、登録簿が極めてバラバラに存在するため、株主または規制者が企業活動の完全な姿をとらえるのは非常に困難である。」フィナンシャル・タイムズは次のように結論付ける。「いいニュースは、多くの隠れたオタクの努力で、あらゆるデータの一部、またはLEIの使用について、グローバル企業の活動像の不透明さが少しずつ減ってきていることだ。」

2017年初頭から、GLEIFは、個々の企業が所有する事業体を調べることができるように、直接親会社および最終親会社の特定とその逆を可能にする関連性データを発行します。

このデータは、一つの収納場所にある関連参照データを含めた、全ての過去および現在のLEI記録の貴重なコピーで構成される、グローバルLEIインデックスとともに利用可能になります。興味を持つ当事者は誰でも簡単に、GLEIFが開発したウェブベースのLEI検索ツールを使って、完全なLEIデータプールにアクセスし検索することができます。

一言でいうと、誰が誰を所有しているかを明確にするデータを発行することにより、GLEIFは、オープンで、標準化された、高品質のLEIデータに基づき企業の点を世界的につなぐことを可能にする、唯一で無料のデータソースを提供することになります。

要約:グローバルLEIシステムでの直接および最終親会社のデータ収集の原則

LEI ROC文書「グローバルLEIシステム内の取引主体の直接親会社および最終親会社のデータ収集 – フェーズ1」の主な特長は、報告書の中で次のように要約されています。

  • 徐々に増やすアプローチ:文書は、2016年の年末ごろに実施を開始する目標とともに、このデータ収集の第一フェーズの一部となるべき優先順位の特徴について記載しています。親会社についてのデータを追加することは、2012年の金融安定理事会のLEIに関する推薦事項で想定されていました。そして、それはユーザーにとって、システムの使いやすさと魅力を増加させることでしょう。同時に、2016年9月時点で世界中でおよそ460,000の事業体がLEIを取得している一方、システムはまだ開発の初期段階にあります。提案は、システムの拡大にとって好ましくない可能性のある、正当な根拠のない費用や複雑さを課すのを避けることを求めています。LEI ROCは、この第一フェーズが、これまでの関連する協議で表明された全てのニーズを満たさない可能性に気づいています。そして、これからのフェーズで、関係するステークホルダーと協議ながら、関係性データの範囲の拡張に取り組んでいきます。
  • LEIを取得している、あるいはこれから取得する事業体は、「直接的な会計連結親会社」だけでなく、連結決算報告書を準備している最高レベルの取引主体として定義される、その「最終的な会計連結親会社」を報告します。両方のケースで、親会社の特定は、会計の定義での連結をこの親会社に適用したものに基づくことになるでしょう。
  • 会計の定義が、出発点として選ばれました。その実用的な特性が、異なる目的のためにデザインされていることによる限界よりも重要だと、言い換えると、投資家に継続企業ベースで関係性を報告するとLEI ROCが結論付けたためです。実用的な特性とは、(i) 金融及び非金融会社に適用できること、(ii) IFRS (国際財務報告基準)とUS GAAP (一般に認められた会計原則)との間の収斂が大きく進んだ後で国際的な比較可能性が増したこと、そして(iii) 広く使用され、公開され、実施が定期的に外部監査官による審査されていることです。
  • 収集された情報は、グローバルLEIシステムで発行され、そのため公的機関や市場参加者が無料で利用できるようになります。しかし、LEIを持たない親会社についてのデータ収集に関する課題を検討できるようにするため、LEIを持たない親会社に関するデータは最初は発行されません。このステージでは、グローバルLEIシステムは、該当する法的フレームワークに従い公開可能な関係性データの記録のみを行います。
  • 事業体は関係性情報をグローバルLEIシステムのLEI発行組織に報告します。そしてLEI発行組織が、入手可能であれば公開文書(例えば、監査を受けた連結財務諸表にある子会社のリスト、法的申請書など)、またはその他のソースに基づき関係性情報を検証します。
  • 親会社に関する情報は、LEIの発行または更新のために提供しなければならない情報の一部になるでしょう。ただし、LEI ROCの報告に詳細を記載した理由により、この情報の提供を断るオプションもあります。

    GLEIFは2016年の年末までに、五社の「先発」LEI発行者と試作品演習を開始します。

レベル2データが急激に展開されることはないということに留意することも重要です。段階的なアプローチで行われます。GLEIFは、レベル2データ収集、検証、発行のエンド・ツー・エンドプロセスを実証するために、2016年末までに、五社の「先発」LEI発行者(付番機関またはLOU)とともに、試作品演習を開始する計画です。試作品演習に参加するLEI発行者は、Bundesanzeiger Verlag GmbH (Bundesanzeiger Verlag)、GMEI Utility、ロンドン証券取引所、Saudi Arabia商業興信所、Unione Italiana per le Camere di Commercio, Industria, Artigianato e Agricolturaです。

LEI発行組織は、LEIを登録した、あるいは取得したいと考えている取引主体の主要なインターフェイスとなります。

GLEIFは、LEIを既に登録した会社が率先してレベル2データを彼らの管理LOUに対して利用可能にすることを推奨しています。

LEIデータプール全体の親会社情報は、2018年初めに利用可能になると予想されています。

2017年初頭に、GLEIFは最初のステップとして、試作品演習に参加したLEI発行者の自主的な提供によって収取されたレベル2データから、発行を開始します。親会社情報の義務的な収集、検証、発行は、2017年4月1日に始まります。現在の時点で、全てのLEI発行者がレベル2データを含むLEIを登録し更新する能力があると期待されています。LEI全てのレベル2データは、最も早くて2018年の初め、つまり、レベル2データの義務的収集が始まる日から1年の更新サイクルの終わりに向かって利用可能になるだろうと予測されています。

現時点では、LEIデータ記録は日々更新される「GLEIF連結ファイル」とともに発行されます。このファイルには、取引主体に対して発行されたすべてのLEIを掲載したLEI発行組織によって発行された個々のファイルと、関連するLEI参照データ、つまり誰が誰についてのレベル1データが含まれます。誰が誰を所有しているかについてのレベル2データは、GLEIFウェブサイトで別ファイルで発行されます。これによって、市場参加者によってすでに確立されたレベル1データ利用の混乱を避けることができます。

LEIを持つ、およびLEIを持たない、直接および最終親会社に関しては明確な手順が適用されます。

LEIを取得した会社に関連する親会社情報については、以下のことを念頭に置いておく必要があります。LEI登録者の直接および最終親会社は、LEIを持っている可能性も持っていない可能性もある。親会社がLEIを持っているか持っていないかにしたがって、会社情報の収集、検証、発行には明確な手順が適用されます。

  • LEI登録者の直接および/または最終親会社がLEIを取得している場合、以下が当てはまります。子会社法人は、直接および最終親会社それぞれのLEIを、LEI発行組織に提供する義務を負います。GLEIFウェブサイトで発行される、親会社情報を提供する別ファイルには、直接および最終親会社それぞれのLEIだけでなく、子会社のLEIが含まれます。
  • LEI登録者の直接および/または最終親会社がLEIを持っていない場合、以下が当てはまります。子会社は、新しい「親会社参照データフォーマット」(以下参照)で、直接および最終親会社の参照データをLEI発行組織に報告する義務を負います。LEI発行組織は、LEIを持っていない最終および直接親会社それぞれのための「暫定ノード識別子」(以下参照)を発行します。初期フェーズでは、最終および直接親会社に関して子会社が報告した参照データと、親会社に発行された暫定ノード識別子は公表されません。

グローバルLEIシステム内の関係性データ収集に関するEI ROC政策文書は、LEI登録者のLEIを持たない最終および直接親会社に関して次のように指定している。最初は、「子会社の公的参照データには、親会社があることのみを記載し、親会社はLEI取得に同意していない、または連絡を取れていないと記載する。」LEIを持たない親会社について収集されるデータ(親会社メタデータ)に三つの特定のルールが適用される。つまり、

  • 「親会社のLEIが提供される状況と比べ、グローバルLEIシステムに過剰な費用が掛かるのを避けるために、関係性を確立するために既に使用された文書以外には、親会社メタデータの検証はない。」この情報は、親会社が子会社に知られていないLEIを持たないことを、LEI発行者が少なくとも年間ベースで検証するのを支援します。
  • 「親会社メタデータの発行と、この親会社メタデータに基づく子会社間の関係性データがない場合は、この低品質データがグローバルLEIシステムの評判とLEIの採用に影響するかもしれないという懸念を含め、実際の事例に基づいて、発行によりグローバルLEIシステムを損なうかどうかを検討するための追加的な時間が提供される。」
  • 親会社についてのメタデータが発行されない限り、このデータはGLEIFとLEI ROCメンバーにのみアクセス可能になる。

LEI ROC政策は、さらに、LEI発行組織による有効な関係性データの収集開始から6か月以内に、LEI ROCが「子会社の参照データの一部として親会社メタデータを公開できるかどうかを決定する」、または「実現可能になり次第すぐに発行が行われるという期待のもとに、発行に関連するすべての課題を解決する」ための追加的な時間が必要になるかどうかを決定すると説明しています。

現在作成中の、グローバルLEIシステムの親会社情報の収集に関連する技術文書

GLEIFはLEI ROCとLEI発行組織と協議しながら、グローバルLEIシステム内の法人の最終および直接親会社についてのデータを収集するために必要な、組織的および技術的標準を作成中です。
詳細は以下の草案文書で説明しています。

  • 関係性記録共通データファイル(RR-CDF)フォーマット草案:この文書は、レベル2データ、言い換えると関係性記録の、保存方法およびLEI発行組織とGLEIF間の転送方法を規定する技術フォーマットを定義します。GLEIFはウェブサイトで、レベル2データをこの技術フォーマットで発行します。
  • 関係性記録共通データフィルフォーマットのための状態遷移ルール草案(検証ルールを含む):この文書は、レベル2データを収集するLEI発行者が守るべき一般的なビジネスルールを定義し、「関係性記録共通データフィルフォーマット」の適用方法についての具体的なマニュアルを提供します。検証ルールは、会計連結関係を検証するプロセスで、LEI発行組織が考慮すべき側面を説明しています。
  • 親会社参照データフォーマット草案:この文書は、LEIを持たない親会社の参照データの保存方法およびLEI発行組織とGLEIF間の転送方法を規定する技術フォーマットを定義します。LEI発行組織がLEIおよび法人参照データを報告する方法について定義している、既存のLEI共通データファイルフォーマットに基づいています。上記の通り、試行フェーズでは、この親会社参照データフォーマットは公開されません。
  • 暫定ノード識別子(PNI)コード草案:この文書は、「親会社参照データフォーマット」に保存された(LEIを持たない)親会社の記録に対応するための技術的識別子を定義します。PNIコードは、国際標準化機構(ISO)17442識別子仕様に基づいています。上記の通り、試行フェーズでは、PNIコードは公開されません。

GLEIFは、上記の文書の草案バージョンを参照用に利用可能にしました(下記の「関連リンク」参照)。この文書の最終バージョンは、2016年11月発行予定です。

GLEIFは、誰が誰を所有しているかについての情報を含める作業を進めるため、LEIデータプールの強化に向かって、進捗の最新情報を定期的に提供し続けます。

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著者について:

シュテファン・ヴォルフは、2014~2024年にGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)のCEOを務めました。2024年3月以降は、国際商業会議所(ICC)の産業諮問委員会(IAB)でデジタル貿易基準の調整、採用、取り組みにまつわるグローバルプラットフォーム、デジタル標準イニシアティブを率いました。IABの議長に任命される前は2023年からIABの副議長を務めており、同年、ヴォルフはドイツの国際商業会議所(ICC)の理事にも選出されました。

ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフは、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。


この記事のタグ:
Global Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF), データ品質, データ管理, 標準, レベル2 / 関係データ(誰が誰の親会社か), 規制監視委員会(ROC)